育成就労18分野へ、食品製造に豆腐製造が加わる案
2026年9月9日、出入国在留管理庁と厚生労働省は、特定技能制度と育成就労制度の「分野別運用方針」を改正する案を有識者会議(第14回)に示しました。受け入れ人数の総枠は123万1,900人のまま動きません。変わるのは、受け入れた外国人材にどの作業をさせてよいかという区分のほうで、飲食料品製造業には「豆腐製造」が、縫製には「手袋製造」が加わる案です。決定は2026年12月の閣議決定を予定しています。
総枠は動かない。動くのは線引きのほう
数字を並べると分かりやすくなります。改正案の受入れ見込数は、特定技能1号が80万5,400人、育成就労が42万6,500人、合計123万1,900人。2026年1月23日に閣議決定された現行の分野別運用方針と比べて、合計はぴたりと同じです。
航空分野を育成就労の対象に加えるにあたり、特定技能1号から300人を引いて育成就労に300人を足した。動いたのはそれだけでした。
つまり「分野が17から18に増える」という見出しだけを見て、受け入れやすくなったと考えると外れます。今回の改正案の中身は、すでに認められている分野の中で、対象になる作業を細かく足していく作業です。

飲食料品製造業で変わるのは3点
弁当・惣菜・水産加工など飲食料品製造業で受け入れている会社に直接関係するのは、次の3点です。
ひとつめ。育成就労の「主たる技能」に豆腐製造が加わります。この業務区分の有効求人倍率は2.79(令和7年度)と資料に記載されています。
ふたつめ。働ける事業所を限定する産業分類に、塩製造業(食塩製造業に限る。)が加わります。こちらの有効求人倍率は4.32です。
みっつめ。産業分類の追加にともない、これまで農林水産省が所管していた飲食料品製造業分野に、財務省が共管省庁として加わります。塩事業の所管が財務省であることによるものです。
受入れ見込数は変わりません。特定技能1号が13万3,500人、育成就労が6万1,400人、分野全体で19万4,900人。業務区分も「飲食料品製造業」と「水産加工業」の2つのままです。
「主たる技能」とは何か
ここは押さえておかないと、上の話が読めません。
主たる技能とは、育成就労制度において、業務区分の範囲内で定めて計画的に育成する技能の単位です(入管庁・厚労省 資料3-1)。特定技能にはない、育成就労だけの考え方で、育成就労計画はこの単位で組み立てます。
技能実習でいえば「職種・作業」に近い役割を果たします。業務区分が「この範囲の仕事をしてよい」という外枠だとすると、主たる技能は「そのうち何を軸に3年かけて育てるのか」という中身です。
豆腐製造が主たる技能に加わるというのは、豆腐を作る工程を軸に据えた育成就労計画を立てられるようになる、という意味になります。
先週、兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)の監査に入りました。全員が2024年8月の入国ですが、日本語はN2からN4まで幅があります。同じ時期に来て同じ現場にいても、2年で差がつく。育成就労では、この一人ずつ違う進み方を、主たる技能ごとの計画に落として記録していくことになります。制度が始まる前に、自社の主力工程が何という名前で呼ばれているかを確かめておく理由は、ここにあります。

うちの分野は、今回変わるのか?
改正案で何かが動くのは、工業製品製造業・建設・飲食料品製造業・漁業の4分野と、育成就労に新しく加わる航空分野です。
介護、宿泊、ビルクリーニング、リネンサプライ、農業、外食業、物流倉庫、造船・舶用工業、自動車整備、鉄道、自動車運送業、林業、木材産業、資源循環は「既存分野(変更なし)」と整理されています。介護や宿泊で受け入れを考えている会社にとっては、12月の改正を待つ理由はない、ということになります。
縫製・電子部品組立をされている会社には関係があります。工業製品製造業分野は業務区分が17から19に増える案で、板ガラス加工とガラス溶融成形が新設されます。加えて、縫製の業務区分に「手袋製造」の業務が追加され、主たる技能にも入る案です(有効求人倍率3.02)。機械金属加工と電気電子機器組立てには「真空成形」やフィルム加工の各技能、金属表面処理には「バフ研磨」が主たる技能として加わります。
漁業分野では業務区分が2つから3つになり、「水産物産地卸売市場業」が新設されます。水産加工と市場が隣接している地域では、押さえておく価値があります。
ただし、資料には条件が書かれています。一定の専門性・技能を要する業務であることの確認(技能水準の設定、試験の作成など)ができない分野・業務区分は、継続検討として追加が令和9年度(2027年度)以降に先送りとなることがある、という注記です。9月9日の案がそのまま12月に決まるとは限りません。
12月までに、受け入れ側でやっておけること
現時点の情報では、11月に有識者会議で意見が出され、12月に関係閣僚会議と閣議で分野別運用方針が決定され、続いて上乗せ告示の制定手続に入る流れです。育成就労法令の施行は2027年4月1日で変わりません。
この2か月半でやっておけることは、ふたつだと考えています。
ひとつは、自社の主力工程の棚卸しです。ラインごとに何を作っていて、それが業務区分と主たる技能のどれに当たるのかを書き出す。豆腐や食塩のように、これまで名前が挙がっていなかった工程を持つ会社ほど、12月の決定が採否を分けます。
もうひとつは、人数と受け入れ体制の見直しです。育成就労計画の認定は、施行日前の申請が2026年9月1日から始まっています。10名規模でまとめて入れる場合、寮の部屋数、配属直後のシフト、日本語教育の時間の確保を、計画の認定申請より先に決めておく必要があります。寮は物件の確保に数か月かかることがあり、ここが実際にいちばん詰まります。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、いま「技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか」という相談がもっとも多く寄せられています。私たちの案内は一貫していて、12月の閣議決定を待って動くのは遅い、というものです。工程の棚卸しと寮の目処は、分野別運用方針がどう決まっても無駄になりません。決まってから動き始めると、面接から入国までの期間がそのまま後ろにずれます。
ご相談の前に用意していただきたいもの
初回のご相談では、次の3つがあると話が早く進みます。
受け入れを考えているラインの作業内容(工程名と、1日の流れが分かるもの)。受け入れ希望人数と時期。そして寮にできる物件の有無です。この3点が分かれば、現行制度で進めた場合と2027年4月以降の育成就労で進めた場合の、それぞれの時期と費用の内訳をその場でお出しします。
MOOZ事業協同組合はミャンマー人材を専門とする監理団体です。受け入れは2名から承っています(5名以上を条件とする組合が多いため、よく驚かれます)。三重県・愛知県・岐阜県を中心に、食品製造、介護、縫製・電子部品組立、宿泊・クリーニング、溶接・自動車部品の受け入れをお手伝いしています。手続きの流れと必要書類のご案内も含め、まずは現場を見せていただくところから始めます。
ご連絡はこちらから。
https://mooz-gr.jp
※本記事は2026年9月9日に公表された改正案(入管庁・厚生労働省 資料3-1)に基づいています。育成就労制度は2027年4月施行予定の新制度で、分野別運用方針の内容は12月の閣議決定まで変わりうるため、最終的な取り扱いは入管庁の最新情報をご確認いただくようお願いします。