残業の監督で4割弱が違法、実習生の受け入れにも響く
29,150事業場に入って、11,228事業場が違法だった
厚生労働省が9月15日に公表した令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の監督指導結果です。労働基準監督署が29,150事業場に監督に入り、11,228事業場(38.5%)で違法な時間外労働を確認しました。
その11,228事業場の中身を見ると、実際に1か月あたり80時間を超える時間外・休日労働があったのが4,991事業場、100時間を超えていたのが2,842事業場です。さらに150時間超が554事業場、200時間超が111事業場ありました。
時間の上限とは別の指摘も出ています。賃金不払残業があったのが1,901事業場、長時間労働者への健康障害防止の措置が取られていなかったのが5,919事業場、労働時間の把握のしかたが適正でなかったのが4,045事業場でした(いずれも監督した29,150事業場に対する割合で、6.5%・20.3%・13.9%)。
ここで押さえておきたいのは、この29,150という数字が無作為に選ばれたものではないことです。厚労省は「長時間労働が疑われる事業場」を選んで監督に入っています。疑われた会社の4割弱で違法な残業が見つかった、という読み方になります。逆に言えば、疑われる材料が外に出ているかどうかが最初の分かれ目です。

労基署の指導で終わらない理由
外国人材を受け入れている会社の場合、話はここで止まりません。
技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)は、労働に関する法律の規定に違反して罰金の刑に処せられた場合などを欠格事由として第10条に並べています。そして第16条で、欠格事由に当たるときは技能実習計画の認定を取り消すと定めています。取り消されると、その後5年間は新しい認定を受けられません。
つまり、人手が足りないから残業でしのぐ、という判断が、5年間まったく受け入れられないという結果に反転しうるということです。順番としては、人手不足 → 長時間労働 → 是正指導や送検 → 受け入れ停止 → さらに人手不足、と悪いほうに回ります。
取消しまで行かなくても、効いてくる場面があります。優良な実習実施者と認められるかどうかは点数で判断され、その評価に法令違反の有無が入ります(技能実習制度運用要領・令和8年4月版)。第3号への移行や人数枠の拡大を考えている会社ほど、労働時間の記録がそのまま将来の受け入れ人数に跳ね返ります。
育成就労については、現時点の情報では、労働関係法令の遵守を前提とする枠組みが引き継がれる方向です。ただし詳細は政省令で変わりうるため、2027年4月に向けて準備される会社は入管庁の最新情報をあわせてご確認ください。

多人数を受け入れている現場ほど、一部の人に寄る
食品工場、宿泊、介護のように波のある業種で、5名・10名とまとめて受け入れている場合、残業は全員に均等には乗りません。作業に慣れた人、日本語で指示が通る人、寮が近くてすぐ来られる人に寄ります。
そして実習生や特定技能の方は、頼まれたことを断りにくい立場にあります。会社が強いているつもりがなくても、本人からは「大丈夫です」としか返ってきません。ここは、会社側の記録を見に行かないと分かりません。
私たちが巡回で見ているのは、制度の書類だけではありません。交通安全の話や生活の様子まで含めて見ています。とくに気にかけているのは、家庭の事情などで寮の集団生活をしていない人です。生活面の状況が見えにくく、無理が溜まっていても表に出るのが遅れます。労働時間の異変も、本人の申告より先に生活の乱れとして出ることがあります。
監理団体の監査ではタイムカードと賃金台帳を確認しますが、監査の日に整っていることと、繁忙期の2週間が適正だったことは別です。うちでは、繁忙期に入る前の段階でシフトの組み方を一緒に見る形を案内しています。人を増やすほど楽になるはずの残業が、増やし方を誤ると特定の数人に集中する、というのが現場でよく起きることです。
9月のうちに確認できる3つ
1つ目は、36協定の特別条項をあと何回使えるかです。年度の後半に入り、10月〜12月の繁忙期を残している会社は、残り回数が足りているかを先に数えます。直近3か月でいちばん時間外が長かった人を1人選んで、その人だけで確認すれば見当がつきます。
2つ目は、タイムカードの打刻と実際の始業・終業がずれていないかです。着替えや朝礼、片付けの時間が外に出ていると、労働時間の把握が適正でないと判断される側に入ります。今回の結果で4,045事業場が指摘を受けたのがここです。
3つ目は、月80時間を超えた人への医師の面接指導の案内です。健康障害防止の措置が取られていなかった事業場が5,919に上っています。案内した記録が残っているかまで見ておきます。
外国人材の受け入れを検討している段階の会社であれば、この3つは採用より前に片付けておくほうが安全です。技能実習計画の認定でも育成就労の計画認定でも、労働時間と賃金の記録は最初に見られます。
相談の前に手元にあるとよいもの
三重県・東海地方で、食品製造・宿泊・介護の現場から「今の残業の実態で受け入れの申請が通るのか」というご相談をいただくことがあります。その際は、直近3か月の36協定の届出控えと、いちばん時間外が長かった月のタイムカードをご用意ください。これだけで、今のまま進められるか、先に整える期間が要るかの見当はつきます。
MOOZ事業協同組合は三重県津市の監理団体で、ミャンマー人材を専門にしています。受け入れは2名から、食品製造(弁当・惣菜・水産加工)、介護、縫製・電子部品組立、宿泊・クリーニング、溶接・自動車部品の実績があります。必要書類のご案内と、受け入れ前後の手続きのサポートを行っています。
ご相談は https://mooz-gr.jp から承ります。