ミャンマーとの育成就労の覚書は、まだ結ばれていない
「2027年4月になったら、うちの実習生はどうなりますか」
9月に入ってから、この質問が最も増えました。技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか——電話でも面談でも、まずこれを聞かれます。
先に在留中の実習生の話をします。2027年4月1日に育成就労制度が施行されても、施行前に認定された技能実習計画は期間満了まで有効です。在留資格「技能実習」のまま活動を続けられ、施行日をまたいだ瞬間に全員が自動で育成就労に切り替わる、ということは起きません。今3年目に入っている人も、2年目の人も、予定どおり満了まで働けます。
問題は、これから採る人のほうです。そしてミャンマー人材に限っては、制度の中身を比べる前に見ておくべき点が1つあります。

ミャンマーは、まだ一段階前にいる
育成就労で外国人を受け入れるには、送り出し国と日本との間に二国間取決め(協力覚書、MOC)が結ばれている必要があります。技能実習でも特定技能でも同じ仕組みでしたが、育成就労は新しい制度なので、覚書も国ごとに結び直しになります。
厚生労働省が公表している「育成就労に関する二国間取決め(協力覚書)」のページに、2026年9月22日時点で載っているのはウズベキスタン・スリランカ・タイ・ラオスの4か国です。ミャンマーはまだこの一覧にありません。
ミャンマーとの間に覚書がないわけではありません。特定技能については、日本政府が2024年3月に協力覚書の継続を更新しています。技能実習についても覚書があり、現に受け入れは続いています。足りていないのは「育成就労の」覚書です。
ここを混同すると、判断を誤ります。「ミャンマーは受け入れ実績が長いから育成就労も当然できる」とはなりません。逆に「覚書がないから当分無理だ」とも言えません。現時点の情報では、覚書の締結は順次進んでいる途中で、ミャンマーがいつ加わるかは公表されていない、というのが正確なところです。送り出し機関のリストについても、育成就労向けのものは「暫定」の扱いで更新が続いています。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、この一点だけは毎月厚生労働省のページを見て確認しています。覚書が公表されれば、その時点でミャンマーからの育成就労の受け入れ設計が具体的に組めるようになります。それまでは「2027年4月から育成就労でミャンマー人材を10名」といった前提で採用計画を固めない——これが今のうちの立場です。

日本語の要件は、待たずに準備できる
覚書が未定でも、手を打てる部分があります。日本語です。
現時点で示されている育成就労の運用では、就労を開始する前に日本語能力A1相当以上の試験に合格しているか、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受けていることが求められます。A1相当の代表例は日本語能力試験のN5です。就労開始から1年経過した時点でA1相当の試験を受けること、そして育成就労を終えて特定技能1号へ移るときにA2相当(N4相当)に合格していることも、あわせて示されています。詳細は政省令で変わりうるため、確定した数字として扱うのは早いのですが、方向は明確です。
技能実習には日本語の法令要件がありませんでした。入国前にどれだけ教えるかは、送り出し機関と監理団体の裁量だったわけです。育成就労では、そこが入り口の条件になります。
これは受け入れ企業にとって、負担が増える話ではなく、むしろ逆です。今まで「配属してみないと日本語力が分からない」と言われていた部分に、入国前の線が引かれます。
ただし、線を超えているかどうかと、現場で通じるかどうかは別です。提携先の日本語学校から毎月届く成績表を見ていると、進度は一人ずつまったく違います。同じ時期に入った人でも、会話は第1課までしか進んでいないのに文法は第9課まで来ている、ということが普通に起きます。兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名、2024年8月入国)では、2年でN2からN4まで差がつきました。全員が同じ日本語学校で、同じ『みんなの日本語 第二版』を使って学んだ人たちです。
だからN5合格という一点だけを見ても、現場で何ができるかは分かりません。うちが送り出し機関に出してもらっているのは、日本語力だけでなく生活態度も含めた月次の成績表で、課ごとの進み方が一人ずつ記録されています。育成就労になれば試験の合否という共通のものさしが加わりますが、それに置き換わるものではなく、上に乗るものだと考えています。
何人から、いつまでに動けばよいか
多人数の受け入れを考えている工場や宿泊施設向けに、現実的な時間の使い方を書きます。
2027年4月1日以降、技能実習での新規入国は原則としてできなくなります。ただし、2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請がなされ、かつ施行日から3か月以内に技能実習を開始する場合は、経過措置の対象になります。面接から入国までにかかる期間を逆算すると、技能実習で入れる最後の便に乗るには2026年内に動き始める必要があります。
ミャンマー人材で10名規模を考えている場合、うちはこう案内しています。育成就労の覚書を待つより、先に技能実習で入れられる分を入れる。理由は2つあります。1つは、覚書の時期が読めないこと。もう1つは、先に入った人が寮や作業の受け入れ体制を作ってくれることです。2名からの受け入れが可能ですが、10名を一度に迎える現場は、最初の2〜3名がいるだけで立ち上がり方がまったく違います。
寮については、育成就労でも技能実習と同様に住環境の基準が問われます。10名規模なら、部屋数よりも先に自転車置き場と通勤経路を見ます。配属直後がいちばん危ないのは交通事故で、うちの巡回では制度の確認と同じくらいの時間を、自転車の乗り方や道路の渡り方の指導に使っています。母国と交通ルールが違うからです。
次に確認すること
今の段階で、経営判断のために見ておく先は3つです。
厚生労働省の「育成就労に関する二国間取決め(協力覚書)」のページ。ここにミャンマーが加わった日が、ミャンマー人材の育成就労のスタート地点になります。次に、自社の業種が育成就労の対象分野に入るか、そして分野ごとに定められる同一機関での就労期間(本人の意向による転籍ができるようになるまでの期間)が1年なのか2年なのか。食品製造・宿泊・介護は、いずれも人数の枠が大きい分野です。
そして、2027年3月末という技能実習の申請期限から逆算して、今年度中に何名を動かすか。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)は、ミャンマー人材を専門とする監理団体です。現地の送り出し機関と連携して、日本語教育と溶接講習(有料オプション)を入国前に実施しています。受け入れは2名から、対応地域は三重県・東海地方を中心に12府県です。手続きのサポートと必要書類のご案内、配属後の巡回まで一貫して担当します。
「うちの業種で、この人数を、いつまでに」という形で聞いていただければ、覚書の状況も含めてその時点で分かっていることをそのままお伝えします。確定していないことは、確定していないと申し上げます。ご相談は https://mooz-gr.jp からどうぞ。