技能実習・特定技能の労基署監督|違反7割超の中身と点検
結論: 厚生労働省が9月15日に公表した令和7年の監督指導の結果では、外国人材を雇う事業場の違反で多かったのは「機械の安全基準」「健診後の医師の意見聴取」「割増賃金」の3つでした。
法令が新しく変わったわけではありません。ただ、監督を受ける事業場は増えています。
今月中に、下の点検表の5項目を自社で確かめてください。
何が公表されたか(2026年9月15日・厚生労働省)
厚生労働省は2026年9月15日、「外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った令和7年の監督指導、送検等の状況」を公表しました。全国の労働基準監督署が令和7年(2025年1〜12月)に行った監督指導の結果です。
| 項目 | 技能実習生関係 | 特定技能外国人関係 |
|---|---|---|
| 監督指導した事業場 | 13,148 | 8,082(前年5,750) |
| 違反があった事業場 | 9,619(73.2%) | 6,179(76.5%) |
| 違反1位:機械などの安全基準(安衛法20〜25条) | 22.8% | 20.7% |
| 違反2位:健診結果についての医師等からの意見聴取(安衛法66条の4) | 15.7% | 16.7% |
| 違反3位:割増賃金の支払(労基法37条) | 15.6% | 16.3% |
| 送検件数 | 26件 | 9件 |
| 本人から監督署への申告 | 108件 | 150件 |
出典:厚生労働省 報道発表と別紙1・別紙2
数字の読み方で注意してほしい点が1つあります。 監督の対象は「労働基準関係法令の違反が疑われる事業場」です。そのため、外国人材を雇う企業全体の7割以上に違反があるという意味ではありません。また、見つかった違反には、日本人従業員に関するものも含まれています。

何が変わるのか・いつからか
法令やルールそのものは変わっていません。 今回はあくまで、令和7年の実績の公表です。
それでも「今」確認してほしい理由は2つあります。
- 監督を受ける事業場が増えています。 特定技能関係は前年の5,750事業場から8,082事業場に増えました。技能実習生関係も、令和3年の9,036事業場から5年続けて増えています。
- 労働基準監督署は、ほかの機関と情報を共有しています。 令和7年は、労働基準監督署から外国人技能実習機構(OTIT)への通報が674件、機構から監督署への通報が2,293件でした。特定技能では、監督署から出入国在留管理機関への通報が502件ありました。違反の中身によっては、実習計画や受け入れの継続にも関わることがあります。
誰に影響するか(業種別)
技能実習生・特定技能外国人を雇っているすべての事業場が対象です。業種によって、違反が多い項目は違います。公表資料から、MOOZが多く扱う業種に近いものを抜き出しました。
| 業種(制度) | 違反率 | 違反が多かった項目(上位3つ) |
|---|---|---|
| 食料品製造(技能実習) | 71.8% | 安全基準36.8%/割増賃金12.7%/労働時間11.9% |
| 食料品製造(特定技能) | 76.1% | 安全基準39.0%/労働時間12.9%/割増賃金12.6% |
| 繊維・衣服製造(技能実習) | 72.5% | 健診後の意見聴取19.2%/年次有給休暇17.8%/労働条件の明示17.4% |
| 機械・金属製造(技能実習) | 68.6% | 安全基準28.2%/衛生基準25.0%/健診後の意見聴取11.7% |
| 社会福祉施設(特定技能) | 76.6% | 割増賃金25.9%/健診後の意見聴取22.9%/労働条件の明示18.2% |
食品工場では安全基準が飛び抜けて多く、介護施設では割増賃金が1位です。業種ごとの「弱いところ」から点検を始めると効率的です。
公表資料には、次のような送検事例(重大・悪質なもの)も載っています。
- 技能実習生に、資格のないままガスで鋼材を切断させていた。その作業中に休業4日以上のけがをしたのに、監督署へ報告しなかった(輸送用機械等製造業)
- 特別条項付きの36協定で決めた回数を超えて残業させ、監督署には偽の労働時間記録を出した(金属製品製造業)
- 資格のない特定技能外国人に、最大荷重1トン以上のフォークリフトを運転させていた(食料品製造業)
監督指導の事例には、仕事中のけがの治療に健康保険を使わせ、本人に費用を負担させていたケースもありました(仕事中のけがは労災保険で扱います)。

企業が今やるべきこと
公表された違反の上位項目と事例をもとに、自社で確かめる項目をまとめました。
| 点検項目 | 確認すること |
|---|---|
| ① 機械の安全措置 | 実習生・特定技能外国人が使う機械に、カバーや安全装置があるか。清掃や調整は、機械を完全に止めてから行う手順になっているか |
| ② 健診後の医師の意見聴取 | 雇入れ時・定期の健診で「所見あり」の人について、医師の意見を聴いて記録しているか(健診から3か月以内が目安) |
| ③ 割増賃金 | 週40時間を超えた分、月60時間を超えた分(5割以上の割増)の計算が合っているか。36協定の特別条項の回数を超えていないか |
| ④ 資格が必要な作業 | フォークリフト(1トン以上)、ガス溶接・溶断、クレーンの玉掛けなどを、資格のない人にさせていないか |
| ⑤ 労災の扱い | 仕事中のけがに健康保険を使わせていないか。休業4日以上のけがを労働基準監督署に報告しているか |
進め方のポイントは次の3つです。
- ②は今月中に確かめるのがおすすめです。 健診結果を保管しているだけで、医師の意見を聴いていない例が多く見られます。担当が決まっていなければ、まず担当者を決めてください。
- 安全の手順は、本人が分かる言葉で伝えます。 公表事例でも、会社側の対策として「母国語での教育」や「イラスト付きの掲示」が挙がっています。ミャンマー人材を受け入れている場合は、作業手順書の要点をミャンマー語でも示すと伝わりやすくなります。
- 年次有給休暇も確認します。 年10日以上の有給が付く人には、年5日を取らせる必要があります(労基法39条7項)。技能実習では、入国から1年たつと対象になる人が出てきます。
なお、違反が見つかった場合、監督署は是正勧告を出します。度重なる指導でも直さない重大・悪質なケースは送検されます。厚生労働省は、今後も適正な労働条件と安全衛生の確保に重点的に取り組むとしています。
この記事で扱わないこと
- 36協定の具体的な書き方や、就業規則の見直し方
- 10月からの最低賃金改定への対応(別記事で扱っています)
- 外国人技能実習機構(OTIT)の実地検査の内容や、育成就労制度での監査の仕組み
- 個別の事業場の是正方法(業種や設備によって違うため、所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください)
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