食品工場の育成就労、転籍制限は1年と2年どちらを選ぶか
2年にはできる。ただし昇給とセット
弁当・惣菜・水産加工などの飲食料品製造業で、2027年4月に始まる育成就労を使う場合、本人の希望による転籍(ほかの会社へ移ること)を制限できる期間は最長2年です。2026年1月23日に閣議決定された飲食料品製造業分野の分野別運用方針に「転籍制限期間は2年とする」と書かれています。
ただし、2年を選んだ会社には条件が付きます。同じ運用方針では、分野別協議会が毎年昇給率を決めて公表し、1年を超える転籍制限期間を設ける会社は、育成就労外国人の所定内賃金を1年目から2年目にかけてその昇給率で上げることになっています。一方、入管庁の「育成就労制度Q&A」(Q51)では、分野の期間が1年を超えていても、会社の判断で1年にできるとされています。1年にすれば、この昇給の条件はかかりません。
つまり食品工場の経営者が決めるのは、「1年たったら転籍される可能性を受け入れるか」「2年目の昇給を人件費に組み込むか」です。なお、ここに書く内容はいずれも現時点の情報です。育成就労は施行前の制度なので、細かい運用は今後変わる可能性があります。

1年にした場合、先に動けるようになるのは誰か
食品分野で本人の希望により転籍するには、期間を過ぎていることに加えて、2つの試験に合格している必要があります。1つは1年経過時までに求められる技能試験(たとえば惣菜製造なら「惣菜製造育成就労評価試験(初級)」)、もう1つは「日本語教育の参照枠」のA2.1相当以上の日本語の試験です。
これを読んで思い出したのが、9月16日に監査で伺った兵庫県・そう菜加工・女性5名の職場です。こちらは技能実習で、5名とも2024年8月の同じ時期に入国しています。それでも2年たった今、日本語はN2からN4まで差がありました。同じ寮、同じ仕事でも、日本語の伸び方はここまで違います。
この差が転籍制限にどう関わるかを考えると、日本語の条件を早くそろえるのは伸びの早い人です。そして、そういう人ほど職場としては残ってほしい人です。1年を選ぶなら「誰でも辞められる」ではなく、「いちばん育った人から転籍できる条件がそろう」と考えておくほうが実態に近いと思います。
地域の事情もあります。運用方針が2年とした理由の1つに、飲食料品製造業の有効求人倍率(2025年1〜3月)が都市部2.40倍、地方部3.71倍で、制限しなければ人材が都市部へ流れかねない、という点が挙げられています。三重県など地方の工場にとって、これは現実的な心配です。
転籍が起きた場合、受け入れにかかった初期費用の一部は、在籍していた期間に応じて転籍先が負担する仕組みになっています(Q&A Q55)。ただ、HACCPに沿った衛生管理を1年かけて教えた手間は、お金では戻りません。

2年を選んだ場合、いくら上がるのか
肝心の昇給率は、9月17日時点で農林水産省の「食品産業育成就労協議会」のページには載っていません。同じページには、加入の受付を予定していること、育成就労計画の認定申請より前に加入が必要なこと、当面は入会金・年会費を取らないことが書かれています。そして、1年を超える転籍制限を設ける場合は、加入時に「育成就労外国人の昇給に関する誓約書」を出すことになっています。
昇給率は、その分野で育成就労外国人を受け入れている会社の賃上げ率(定期昇給とベースアップ)をもとに決まります。運用方針には、昇給率が高くなるよう、育成就労外国人だけの賃上げ率も必要に応じて考慮すると書かれています。業界の平均と同じか、それより高くなる可能性があるということです。
増える人件費は「月給×昇給率×人数×12か月」で見積もれます。多人数で受け入れる工場ほど、この計算の影響は大きくなります。10名なら10人分で、しかも毎年入る人ごとに同じ計算が続きます。
多人数で考えている場合に、もう1点あります。飲食料品製造業の育成就労は、令和9年度から2年間で6万1,400人が受け入れの上限とされています。これを超えそうになると、農林水産大臣が育成就労認定の一時停止を求める仕組みです。まとまった人数を計画しているなら、始める時期は早めに決めておくほうが安全です。
うちの案内と、今のうちに出しておく数字
当組合では、食品工場には「2年を基本に、昇給は最初から人件費の計画に入れる」と案内しています。1年では、衛生管理と製造品目への慣れが現場の中心と呼べるところまで届かないことが多いからです。それに、2年目に給与を上げることは、制度とは関係なく、残ってもらうために多くの工場がすでにしていることでもあります。ただ、2年はつなぎとめる期間というより、2年目の給与を約束する期間だと考えてください。3年目以降に特定技能へ移ったあと残ってもらえるかは、結局その職場で働き続けたいと思えるかどうかで決まります。
協議会の昇給率が出たらすぐ比べられるように、次の数字を社内で出しておいてください。
- 日本人社員・技能実習生の、1年目から2年目にかけての所定内給与の上げ幅(直近の実績)
- 育成就労で受け入れたい人数と時期(2027年4月以降のいつから、何名か)
- 担当してもらう作業が、惣菜製造・水産加工品製造・パン製造などのどれに当たるか
MOOZ事業協同組合(三重県津市)は、弁当・惣菜・水産加工の工場での受け入れを多く手がけています。2名から受け入れられます。上の3つの数字が分かれば、転籍制限を1年と2年にした場合の人件費の違いと、技能実習で今受け入れる場合との比較を並べてお見せできます。協議会への加入や育成就労計画の認定申請の必要書類のご案内も含めて、手続きのサポートをします。ご相談は https://mooz-gr.jp からどうぞ。