介護の技能実習・特定技能・育成就労、分かれ目は日本語
「技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか」。この9月、いちばん多く受ける相談です。ただ、介護施設の方から聞かれたときだけ、私たちは答え方を変えています。介護は日本語の要件が他の業種と違っていて、「待つ・待たない」より先に決まってしまうものがあるからです。
先に結論を書きます。介護で外国人材を受け入れるなら、制度選びの軸は入国時期ではなく、日本語の関門がどこに置かれているかです。技能実習は入ってから2年目までにN3、特定技能は日本に来る前にN4と介護の日本語試験。この期限の位置が、施設が負う負担のほとんどを決めます。
介護だけ、日本語の関門が二重にある
技能実習には職種ごとの「固有要件」があり、介護はその中でもっとも条件が重い職種です。厚生労働省の告示で定められ、国際研修協力機構(JITCO)が解説している内容によると、第1号(1年目)は「日本語能力試験のN4に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者」、第2号(2年目)は「日本語能力試験のN3に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者」。
技能実習のほかの職種に、日本語の法令要件はありません。介護だけが、入口と2年目の二か所に関門を持っています。
特定技能1号の介護は、関門の置き方が逆です。介護技能評価試験と介護日本語評価試験、そして日本語能力試験N4またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の合格が、在留資格を取る時点で必要になります。つまり特定技能で配属される人は、制度上かならず介護の日本語試験に受かっています。来てから日本語が届かない、という事態は起きません。そのかわり、採れる人の母数は最初から絞られます。
| 日本に来る前 | 来てから | |
|---|---|---|
| 技能実習「介護」 | N4合格 | 2年目に進むときN3合格 |
| 特定技能1号「介護」 | 介護技能評価試験・介護日本語評価試験・N4またはJFT-Basic | 法令上の日本語要件なし |
| 育成就労(2027年4月施行予定) | 現時点の情報では段階的な基準 | 特定技能1号の水準までの学習 |
育成就労については、日本語を段階的に引き上げる建て付けが示されていますが、分野ごとの上乗せを含めた詳細は政省令で確定します。介護は要件が重い分野なので、他分野と同じ水準に収まるとは限りません。現時点の情報では、ここを前提に計画を固めるのは早すぎます。

2年で、同じ時期に来た人でも差がつく
先週、兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)の監査に行きました。全員2024年8月の入国です。同じ日に日本語学校を出て、同じ日に配属された5名の日本語力が、2年たった今、N2からN4まで開いていました。
介護でこれが起きると、影響が制度に直結します。N4のまま2年目を迎えた人は、技能実習の2号に進む要件を満たさないからです(N3に届かなかった場合の取り扱いについては告示に定めがあるため、厚生労働省・外国人技能実習機構の最新の運用を確認する必要があります)。
なぜ差がつくのか。私たちは長いあいだ、本人のやる気の問題だと思っていました。提携先の日本語学校から月次の成績表と課ごとの進度をもらうようになって、見方が変わりました。同じ時期に入った人でも、会話は第1課、文法は第9課まで進んでいる、というように伸び方の形がそもそも違う。他の生徒に教える余裕のある人もいれば、特定の課で止まる人もいる。配属前から個別に見えています。
だから、介護で技能実習を選ぶ施設さんには、私たちはこう案内しています。N3対策を本人の自習に任せない。勤務シフトの中に学習の時間を最初から置く。早番・遅番で回す職場ほど、あとから時間を作るのは難しくなります。受け入れを決める段階で、週に何時間をどの枠に置くかまで決めてしまうのが、結果的にいちばん安く済みます。
逆に、そこまでの体制を今から組むのが難しい施設であれば、特定技能を勧めます。日本語の投資を送り出し側と本人に前倒ししてもらう形です。どちらが優れているという話ではなく、日本語の負担を施設が持つか、入口で買うかの選択です。

何人まで入れられるかは、常勤職員の数で決まる
介護は人数の上限も独自です。技能実習の介護では、実習生の総数は事業所の常勤介護職員の総数を超えることができません(JITCO)。特定技能の介護も同様に、事業所単位の枠が設けられています。
この作りは、多人数を受け入れたい施設にとってはむしろ有利に働きます。常勤の介護職員が30名いる施設なら、枠の側が先に尽きることはまずありません。実際に上限より先に効いてくるのは、寮の部屋数と夜勤シフトの組み方です。
事業所についても要件があります。開設後3年以上が経過していること(同一法人の他の介護事業所が3年以上経過している場合などの例外あり)。そして夜勤など少人数の状況下での業務をさせる場合は、利用者の安全確保のために必要な措置を講じることが求められます。新規開設した施設の人員をこれで埋める、という使い方はできません。
当組合の受け入れは2名からです。他の団体では5名からというところが多く、この点を伝えると驚かれます。ただ介護に限っては、2名より3〜4名をまとめて入れたほうが定着します。同じ言語で話せる相手が職場にいるかどうかで、最初の半年の様子がはっきり違うためです。
2027年4月を待つ判断をするなら
育成就労は2027年4月の施行予定で、介護分野の運用方針も公表されています。待つという判断自体は合理的です。ただ、待つ間の人手をどうするかを一緒に決めないと、結局どちらも進まないまま1年が過ぎます。
私たちが実際に案内している形は、「今の欠員は技能実習または特定技能で埋め、2027年度以降の増員を育成就労で考える」という二段構えです。介護は日本語要件が重い分、制度が切り替わっても現場に必要な準備(学習時間の確保、寮、夜勤体制)は変わりません。先に準備した施設が、制度が変わったときにそのまま動けます。
相談の前に数えておくと、話が早いもの
介護の施設からご連絡をいただいたとき、私たちが最初に聞くのは次の4つです。事前に分かっていれば、初回の打ち合わせで受け入れ可能人数と時期まで出せます。
- 事業所ごとの常勤介護職員の数(受け入れ上限がここで決まります)
- その事業所の開設年
- 寮として使える部屋数と、施設からの距離
- 夜勤・早番を含むシフトの中で、日本語学習に週何時間置けるか
MOOZ事業協同組合は三重県津市の監理団体で、ミャンマー人材を専門にしています。送り出し機関と連携して現地で日本語教育を行い、月次の成績表と課ごとの進度を配属前に共有しています。介護のN3をどこまで現地で押し上げられるか、どの時点で施設側に引き継ぐかを、受け入れの前に一緒に設計します。手続きの流れと必要書類のご案内も含めて対応します。
ご相談は https://mooz-gr.jp から。東海地方であれば、施設に伺って現場を見たうえでお話しします。