育成就労の日本語、3年でN4まで届かせるのは誰の仕事か

育成就労の日本語、3年でN4まで届かせるのは誰の仕事か

日本語は「本人の努力」から「受け入れ側の段取り」に変わる

技能実習では、日本語の水準は法令で決まっていませんでした。どこまで伸ばすかは、送り出し機関と監理団体の教育、それに本人の頑張り次第という面がありました。

育成就労では、ここがはっきり変わります。入管庁が公表している育成就労制度のQ&Aでは、現時点の情報として次の3つが示されています。

まず、働き始める前までに、日本語能力A1相当以上の試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受けること(Q56)。次に、育成就労の開始から1年以内にA1相当を身につけ、3年間を通じてA2相当を修得して試験に合格することが求められること(Q63)。そして、3年の間にA2相当の講習を100時間以上受ける機会を提供しなければならず、その費用も含めて育成就労実施者(受け入れ企業)か監理支援機関が必要な措置を取ること(Q64・Q66)。

さらに、育成就労を終えて特定技能1号に移るには、技能の試験に加えて、日本語能力試験N4などの合格が要件になります(Q75)。

A1は「ゆっくり話してもらえば、あいさつや身の回りの簡単なやり取りができる」程度、A2は「仕事や生活でよく使う表現が分かる」程度です。日本語能力試験でいえば、特定技能への移行で求められるN4がひとつの目安になります。

JITCOは9月14日、育成就労の日本語要件を扱う現場向けセミナー(10月21日・オンライン)の案内を出しました。施行まで半年あまりとなって、監理団体や企業の関心がここに集まり始めています。

この記事のポイント

3年後も残ってほしいなら、日本語は人員計画の話になる

経営の目線で見ると、いちばん大きいのはQ75です。

育成就労で3年育てた人に、そのまま特定技能として同じ職場で働き続けてもらう。多くの会社はこれを前提に受け入れを考えています。ところが、N4などに受かっていなければ、その道は開きません。技能の試験に通っても、日本語が届かなければ移行できないということです。

たとえば食品工場で10名受け入れて、3年後に移行できたのが6名だったとします。残り4名の穴は、新しく採用して一から育て直すことになります。日本語の遅れは、そのまま3年後の人員の穴になります。

分野によっては、A2より高い目標を定めることもできるとされています(Q63)。自社の分野の分野別運用方針で水準がどう決まっているかは、申請前に入管庁の最新情報をご確認ください。

同じ日に来た10人でも、進み方はそろわない

多人数を受け入れる会社にとって厄介なのは、進み方に個人差があることです。

当組合が提携しているミャンマーの日本語学校では、生徒一人ずつの進度を課ごとに記録しています。そこで見ていると、同じ時期に入学した人でも「会話はまだ第1課、文法は第9課まで進んでいる」というように、分野ごとにばらつきが出ます。ほかの生徒が分からないところを教えられるほど進んでいる人もいれば、伸び悩む人もいます。

来日後も、この差は自然には縮まりません。10名を1クラスにまとめて同じ講習を受けてもらうと、上の人には物足りず、下の人はついていけない、ということが起きます。A2の講習を100時間用意するとき、全員まとめて1回で済ませる前提は置かないほうがよいと考えています。

MOOZ事業協同組合

講習をいつ入れるか

Q&A(Q69)では、A2を目指す講習の受講時間を、労働時間として扱うことまでは義務付けていません。ただ、義務でないから就業後に寮で自習してもらえばよい、という話でもありません。「受講の機会を提供する」責任は受け入れ側にあります。

3交代や早朝シフトのある食品工場、夜勤のある介護施設、繁忙期の読みにくい宿泊施設では、100時間を3年のどこにどう入れるかを先に決めておかないと、後で回らなくなります。オンラインでの受講も、双方向でその場でやり取りできることなどの条件を満たせば認められるとされています(Q65)。寮にネット環境と静かな場所があるかどうかも、実務上の確認項目になります。

講習の費用は、受講先の機関と時間数によって変わります。当組合でも、施行に向けて具体的な金額を確かめている最中です。見積もりは、分かった時点で受け入れ予定の企業にお出しします。

A1は入国前に済ませておきたい

就労開始前のA1は、試験の合格か、認定日本語教育機関での100時間の講習か、どちらかで満たせます。Q67にあるとおり、A1の試験に受からないと入国できないわけではありません。

それでも当組合としては、A1は入国前の試験合格で満たしておくのがよいと考えています。講習で満たす場合、その100時間は配属の前に入ります。現場に立つ日がその分遅れますし、講習にかかる費用や手配も発生します。入国前に合格している人なら、入国後講習(ここでも日本語の科目は必要です)を終えれば配属できます(Q68)。

ミャンマーの提携校では、『みんなの日本語 第二版』と会話の映像教材を使い、毎月の成績表で日本語と生活態度の両方を記録しています。入国前の段階で「この人はA1の試験に届きそうか」を面接の時点から一緒に見られるのが、送り出し側と組んでいる強みだと考えています。

今からやっておけること

育成就労は2027年4月1日施行予定で、施行日前の育成就労計画の認定申請は9月1日からOTITで受付が始まっています。細かい運用は今後の政省令や運用要領で変わりうるため、現時点の情報として、次の3つを社内で決めておくと動きやすくなります。

1つ目は、3年後に特定技能へ移ってほしい人数。ここが決まると、日本語にどこまで手をかけるかが決まります。2つ目は、A2講習を入れる時間帯。シフト表の上で、勤務時間内に入れるのか、勤務後なのか。3つ目は、受講場所。寮でオンライン受講させるなら、通信環境と部屋の確保です。

当組合(MOOZ事業協同組合、三重県津市)は、三重県・東海地方を中心に、2名からの受け入れに対応しています。面接の前に、何名を何年後まで残したいか、シフトの形、寮の状況を教えていただければ、日本語教育の進め方と、分かっている範囲での費用の見込みをお伝えします。複数名をまとめて受け入れる食品工場・介護施設・宿泊施設のご相談もお受けしています。

ご相談は https://mooz-gr.jp から。