育成就労の送出手数料は月給2か月分まで―会社が負う分と確かめ方―

育成就労の送出手数料は月給2か月分まで―会社が負う分と確かめ方―

1. はじめに ~「全部会社持ちになる」わけではない~

育成就労(2027年4月1日に始まる予定の、技能実習に代わる制度)では、外国人本人が送り出し機関に払う費用の合計は、1年目の所定内月給の2か月分までとされています。入管庁の「育成就労制度の関係省令等について」に書かれている内容です。

この上限を超える分は、受け入れ企業か監理支援機関が負担すると、入管庁の育成就労制度Q&Aで説明されています。2027年4月以降に育成就労で外国人を受け入れる予定の会社には、入国までの費用の一部が会社側に移る可能性がある、ということです。

相談の場で、ときどきこんな受け止め方を聞きます。「育成就労になったら、送り出しの手数料は全部会社が払うんでしょう」。

制度の決まりはそうではありません。上限までは本人が払うことが認められていて、会社や監理支援機関が持つのは上限を超えた部分です。ですから、会社の負担がいくらになるかは、送り出し機関がいくらを求めるかで変わります。ゼロのこともあれば、人数分まとまった額になることもあります。

当組合への費用の相談でいちばん多いのは、「初期費用と月額の監理費の内訳を、実額で知りたい」という声です。育成就労では、そこにもう一つ、送り出し機関の手数料のうち会社が持つ分という項目が加わります。

連載の第4回は、この上限の中身と、受け入れ企業が見積もりと書類で何を確かめればよいかを扱います。育成就労は施行前の制度で、細かい運用は政省令や運用要領で変わることがあります。この記事は2026年10月16日時点の公表資料にもとづいています。

この記事のポイント

2. 上限の決まり ~本人負担の合計を、1年目の所定内月給の2か月分まで~

上限の対象は、本人が送り出し機関に払う費用の合計です。名目で区切られてはいません。

入管庁の「育成就労制度の関係省令等について」では、外国人が送り出し機関に払う費用の合計が、月給の2か月分を超えてはならないとされています。基準になる月給は、働き始める1年目の所定内賃金の月額です。残業代などは含みません。

同じ資料には、2か月分はあくまで上限で、本人の負担はできるだけゼロに近いことが望ましい、という考え方も書かれています。2か月分までなら取ってよい、という目安ではありません。

本人ではなく親族が払った分も数える

外国人技能実習機構の「育成就労の準備に関し本国で支払った費用の申告書」(参考様式第1-10号)では、1欄に、送り出しの過程で本人が取次送出機関に払った一切の費用の総額を書きます。費目は問いません。

育成就労計画認定申請書の費用の欄の注意書きでは、本人の親族などが送り出し機関に払った金額も含めるとされています。家族が立て替えた分を外せば上限に収まる、という扱いはできません。

月給は、雇用条件書の数字から出す

所定内賃金の月額は、雇用契約で決めた給与から計算します。様式の注意書きでは、時給の場合は「時給×1日の所定労働時間×1か月の平均所定労働日数」で月額にします。日給の場合は「日給×1か月の平均所定労働日数」です。

仮の数字で計算してみます。

時給1,150円、1日の所定労働時間8時間、1か月の平均所定労働日数21日の会社なら、所定内賃金の月額は19万3,200円です。本人が送り出し機関に払える費用の上限は、その2か月分で38万6,400円になります。

この数字は、残業がどれだけ見込めるかには左右されません。食品工場で繁忙期に残業が多い会社でも、基準は所定内の月給です。

裏返すと、所定内の給与を高く設定する会社ほど、本人負担の上限も高くなります。上限を超えて会社が持つ分は、それだけ少なくなる計算です。ただ、上限は「望ましい額」ではないので、ここを理由に給与を決める話ではありません。

3. なぜ上限が設けられたのか ~来日前の借金が、失踪や転籍の問題とつながっていた~

この上限は、技能実習を見直す議論の中で、来日前の借金が問題になったことから設けられました。

技能実習では、本人が本国で払った費用を「本国で支払った費用の明細書」(参考様式第1-21号)で届け出ます。ただ、育成就労のような一律の上限額は、法令で決まっていませんでした。そのため、国や送り出し機関によって、本人の負担に大きな差がありました。

借金を抱えて来日した人は、返済のために少しでも高い給与を求めます。それが、実習先から姿を消すことや、無理な働き方につながると指摘されてきました。この連載の第3回で取り上げた技能実習の見直しの議論でも、送り出しの費用は大きな論点の一つでした。

厚生労働省の合同会議に出された「改正入管法及び育成就労法の関係省令に関する論点」(資料2-2)では、送り出し機関に払う費用を月給の2か月分までとする案が論点として示されました。委員からは、手数料は本来取るべきでなく、認める場合もなるべく低い基準にすべきだという意見も出ています。

最終的に、上限は2か月分で決まりました。そのうえで、送り出しにかかる費用は、送り出し機関・受け入れ企業・監理支援機関のあいだで分け合う考え方が取られています。本人だけに負わせない、というのが制度の方向です。

ここから読み取れるのは、上限は一度決めたら終わりの話ではない、ということです。本人負担をゼロに近づけるという方向が資料に書かれている以上、受け入れ企業の負担の比重が、今後重くなることはあっても軽くなる見込みは低いと、私たちは見ています。

MOOZ事業協同組合

4. 会社が負う分 ~上限を超えた部分を、会社と監理支援機関で分ける~

上限を超える分は、受け入れ企業(育成就労実施者)か監理支援機関が負担します。どちらがいくら持つかまでは、法令では決まっていません。

つまり、会社と監理支援機関の取り決めで決まる部分です。見積もりのとき、ここが曖昧なままだと、入国の直前になって「この分は会社さんで」という話が出かねません。

監理支援機関は、監理支援費の他には受け取れない

運用要領の第5章(監理支援機関の許可等)では、監理支援機関は監理支援費のほかに手数料や報酬を受け取れないとされています。送り出し機関から不当な払い戻し(キックバック)を受けることも認められていません。

受け入れ企業にとっては、監理支援機関に払うお金の名目が「監理支援費」と、上限を超えた送り出し費用の負担分などに分かれて、根拠が説明されているかが、見積もりを見るときの目安になります。

多人数で受け入れると、差は人数分に広がる

1人あたりの負担は小さく見えても、人数を掛けると額が変わります。

たとえば、送り出し機関の費用総額が上限を1人あたり数万円超える場合、食品工場で10名をまとめて受け入れれば、その10倍が会社側の検討事項になります。何万円になるかは、送り出し機関と国によって違うので、ここでは金額を書きません。

一度に多人数を受け入れる工場・宿泊・介護の会社ほど、1人あたりの会社負担を見積もりの段階で数字にしておく意味が大きくなります。

MOOZとしての考え方

MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、育成就労の見積もりを出すとき、送り出し機関の手数料のうち会社が持つ分を、他の費用と分けて書くことをおすすめしています。

当組合が連携しているのはミャンマーの送り出し機関です。ミャンマーとの育成就労の覚書(二国間の取り決め)は、2026年10月時点でまだ結ばれていません。送り出し機関の費用の総額がいくらになるかも、覚書と現地の決まりが出そろうまで確定しません。

だからこそ、金額が動いても「誰が、どの部分を、どの順で持つか」の線引きだけは、先に決めておけます。当組合では、本人の上限額、送り出し機関の費用の総額、上限を超える分の会社負担を、受け入れる人ごとに並べてお見せする形を取っています。

5. 確かめ方 ~雇用条件書・費用の内訳・本人の申告書の3点を突き合わせる~

本人の負担が上限に収まっているかは、3つの数字を突き合わせることで確かめます。

雇用条件書の月給から、上限額を出す

最初に、雇用条件書(育成就労では参考様式1-2の雇用契約書及び雇用条件書)の所定内賃金から、上限額を計算します。第2節の式のとおりです。

基本給のほかに毎月決まって払う手当があれば、所定内賃金に含まれるかを確かめます。迷う手当は、監理支援機関に確認してから計算に入れます。

送り出し機関の費用を、総額と内訳で受け取る

次に、送り出し機関が本人に求める費用を、総額と内訳の両方で書面で受け取ります。現地通貨で示されることが多いので、日本円の換算額も並べます。

参考様式1-10の注意書きでは、日本円への換算は、申請する年度に外国人技能実習機構のホームページに載るレートで行います。見積もりの段階から同じ考え方で換算しておくと、申告書の数字と食い違いません。

本人の申告書(参考様式1-10)と照らし合わせる

参考様式1-10は、送り出し機関と本人が作る書類です。取次送出機関は、取った額が育成就労計画の報酬の月額2か月分を超えないことを誓約します。最後に、本人が払った額と内訳を理解し、ほかに費用を取られていないことを確かめて署名します。

この申告書は、育成就労計画の認定申請でそろえる書類の一つです。会社が作るものではありませんが、計画に書いた月給と、申告書の1欄の総額が合っているかは、受け入れる会社も見ておくべき点です。食い違いがあれば、申請の前に止めて確かめます。

本人の口から、もう一度聞く

書類の数字が整っていても、本人の理解とずれていることがあります。

当組合の入国後講習では、日本語で「点検」「車道」「違反」といった言葉が通じず、「チェック」と言い換えて初めて伝わった場面がありました。費用の話はもっと込み入っています。書類に署名していても、本人が何にいくら払ったかを正確に言えるとは限りません。

だから、配属前の面談では、母語の分かる通訳を入れて、本人が送り出し機関に何を払ったかをもう一度聞きます。書類とずれていたら、そこで監理支援機関に伝えます。

確かめる流れを、時期の順に並べると次のとおりです。

  • 雇用条件を決めたとき:所定内月給から本人負担の上限額を計算する
  • 送り出し機関の選定・見積もりのとき:費用の総額と内訳を書面で受け取り、上限を超える分の負担者を決める
  • 計画の認定申請の前:参考様式1-10の総額が上限に収まり、計画の月給と合っているかを見る
  • 配属前の面談:本人に、払った額と内訳を通訳を入れて確かめる

6. おわりに ~見積もりは「誰がいくら持つか」を分けてもらう~

育成就労の送り出し手数料の上限について、受け入れ企業がすることをまとめます。

上限は、本人が送り出し機関に払う費用の合計で、1年目の所定内月給の2か月分です(2026年10月時点の入管庁資料、現時点の情報では)。超える分は、受け入れ企業か監理支援機関が負担します。その分け方は、会社と監理支援機関の取り決めで決まります。

受け入れを考えている会社が次に確かめる1点は、今の見積もりに、送り出し機関の手数料のうち会社が持つ分が、別の行として書かれているかです。書かれていなければ、監理団体(監理支援機関になる予定の団体)に分けて出してもらってください。

次回は、育成就労を受け入れられない会社を取り上げます。人数枠と、直前の非自発的な離職がどう関わるかを見ていきます。

当組合にご相談いただくときは、業種、受け入れたい人数、働き始めたい時期、予定している所定内の時給か月給を教えてください。本人負担の上限額と、会社が持つ可能性のある分を、受け入れる人ごとに分けてお見せします。

MOOZ公式サイト

あわせて読む:
- 育成就労の本国で支払った費用の申告書(1-10)、上限は報酬2か月分
- 育成就労とは何か―技能実習から変わるところ・変わらないところ―

出典:
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の関係省令等について」 📄 出入国在留管理庁の資料(PDF)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」 🔗 出入国在留管理庁のページ
- 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度 運用要領」令和8年8月版 📄 出入国在留管理庁の資料(PDF)
- 厚生労働省「改正入管法及び育成就労法の関係省令に関する論点」 📄 厚生労働省の資料(PDF)
- 外国人技能実習機構「参考様式第1-10号 育成就労の準備に関し本国で支払った費用の申告書」 🔗 外国人技能実習機構のページ