育成就労とは何か―技能実習から変わるところ・変わらないところ―
1. はじめに ~2027年4月に、今の実習生が一斉に切り替わるわけではない~
育成就労は、技能実習に代わって2027年4月1日に始まる制度です。目的は「国際貢献」から「人手不足の分野で人を育て、確保すること」に変わり、本人の希望による転籍が条件つきで認められます。
それでも、会社が計画の認定を受け、監理する機関が間に入り、雇用契約で働いてもらうという骨組みは残ります。2027年以降も食品工場・介護施設・ホテルなどで外国人材を採り続けるつもりの会社に関係する話です。
2026年9月以降、当組合にいちばん多く寄せられている相談は「技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか」です。
この相談の前提で誤りやすいのが、「施行日に全員が新しい制度へ移る」という見方です。出入国在留管理庁(入管庁)の育成就労制度Q&Aでは、施行日にすでに実習中の人は、認定された計画どおり技能実習を続けられるとされています。
施行日を境に変わるのは、これから新しく入る人の入り口のほうです。
この連載の前回は、三重県の働き手が減り、外国人が増えた理由を数字で追いました。今回はその受け皿になる育成就労の基本を、技能実習から変わるところと変わらないところに分けて見ていきます。以下はすべて、2026年10月時点の情報です。育成就労は新しい制度なので、細かい点は今後の政省令や運用要領で変わることがあります。

2. 育成就労とは何か ~3年で特定技能1号の水準まで育てる制度~
育成就労とは、人手不足の分野で外国人を原則3年かけて育て、特定技能1号の水準の人材にするための制度です(現時点の情報では)。
根拠は、2024年6月21日に公布された入管法と技能実習法の改正法です。この改正で技能実習法は「育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」に改められ、施行日は2027年4月1日とされています(入管庁「育成就労制度の概要」)。
なぜ、制度ごと作り直したのか
技能実習の目的は、開発途上国へ技能を移す国際貢献でした。技能実習法には「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」とまで書かれています(第3条第2項)。
ところが実際の現場では、技能実習生は人手不足の工場や施設を支える働き手になっていました。目的と実態のずれは、長く指摘されてきました。
政府の有識者会議が2023年11月に最終報告書をまとめ、目的を「人材の育成と確保」に正面から置き直す方向が決まりました。それを受けたのが2024年の改正法です。
この流れを知っておくと、育成就労の決まりの多くは読みやすくなります。「働き手として育て、日本に長くいてもらう」前提に立つと、転籍を認めること、日本語の目標を置くこと、特定技能へつなげることは自然な帰結になります。
期間は最長5年から原則3年へ
技能実習は1号1年、2号2年、3号2年で最長5年でした。育成就労は原則3年です。
3年で終わりではありません。3年のあいだに特定技能1号の水準まで育て、その先は特定技能で働き続けてもらう設計です。当組合のグループ企業である株式会社NADy(登録支援機関)が特定技能の支援を担当しているのは、この「3年の先」を見越しているからです。
「職種」ではなく「分野」で決まる
技能実習は、外国人技能実習機構(OTIT)の移行対象職種一覧(2026年7月29日時点)で96職種174作業という細かい単位でした。
育成就労は、特定技能と同じ「分野」と「業務区分」の単位になります。分野別運用方針は2026年1月23日に閣議決定され、同じ日に受入れ見込数も決まりました。2029年3月までの2年間で、17分野の合計42万6,200人です。そのうち飲食料品製造業は6万1,400人です(入管庁「特定技能制度及び育成就労制度の受入れ見込数について」)。
弁当・惣菜・水産加工の工場であれば、飲食料品製造業の分野に入る見込みです。自社の作業がどの分野・業務区分にあたるかは、分野別運用方針の別紙と、OTITが公表している職種と分野の対応表で確かめられます。
3. 変わるところ① 転籍 ~同じ職場で1〜2年働けば、本人の希望で移れる~
いちばん大きく変わるのは転籍です。本人の希望による転籍が、条件つきで認められます。
技能実習でも、会社の倒産やハラスメントなど、やむを得ない事情があれば別の会社へ移れました。育成就労ではそれに加えて、本人が「移りたい」と希望したときの道ができます。
入管庁のQ&Aと基本方針(厚生労働省の公表資料)では、本人の希望で転籍するための主な条件は次のとおりです。
- 同じ受け入れ先で、分野ごとに決められた期間(1年以上2年以下の範囲)働いていること
- 分野ごとに決められた水準の技能と日本語の力を身につけていること
- 転籍先が、受け入れ先として適正であること
- 転籍先で、本人の希望で移ってきた人が全体の3分の1を超えないこと
転籍を制限する期間は、基本方針で「1年とすることを目指しつつ、当分の間、分野ごとに1年から2年の範囲で設定」とされています。
多人数で受け入れる工場にとって何が変わるか
10名、20名と受け入れている工場では、待遇や職場の雰囲気の差が、そのまま人の移動につながりうるということです。近くの工場の時給が高い、寮が新しい、という差は、育成就労では「移る理由」になります。
一方で、条件を見ると、転籍できるのは技能と日本語の試験を通った人です。つまり、よく育った人ほど移る選択肢を持ちます。この点は「育成就労で先に転籍できるのは、よく育った人です」で詳しく書きました。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、転籍を制度で縛る発想ではなく、昇給の道筋と日本語の学び方を最初に紙で示すことをおすすめしています。食品工場での具体的なやり方は「食品工場の育成就労は、契約の前に昇給の道筋を紙で渡す」にまとめています。

4. 変わるところ② 日本語と費用 ~入国前にA1、本人の手数料は月給2か月分まで~
日本語の目標が、制度として決まります。費用の負担のしかたも変わります。
日本語は「入国前」「1年目」「3年目」の3段階
入管庁のQ&Aでは、働き始める前に、日本語能力A1相当以上の試験に合格するか、A1相当の講習を100時間以上受けることが求められています。A1は、あいさつや身の回りの簡単なやりとりができる程度の段階です。
1年目には分野ごとに決められた中間の試験があり、3年間を通じた目標はA2.2相当の日本語能力です。
技能実習では、介護などの一部の職種を除いて、日本語に法令上の要件はありませんでした。そのため、受け入れ前に何を教えるかは、送り出し機関と監理団体の差が出る部分でした。育成就労では、その一部が制度の側に組み込まれます。
それでも、全員が同じように伸びるわけではありません。
2026年9月16日、兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)の監査。全員が2024年8月の入国で、2年で日本語の伸び方に大きな差がついていた。
同じ月に来て、同じ寮で暮らしても、2年でこれだけ差がつきます。3年目のA2.2を全員に届かせるには、制度の要件とは別に、一人ずつ進み方を見る仕組みが要ります。
当組合が連携しているミャンマーの日本語学校では、毎月の成績表で、日本語の進み具合と生活態度を一人ずつ記録しています。配属の前から、誰がどこでつまずいているかが見えるようにしているのは、このためです。
送出機関への手数料は、本人負担に上限
入管庁の「育成就労制度の関係省令等について」では、外国人本人が送出機関に払う費用の合計は、1年目の所定内月給の2か月分を超えてはならないとされています。残業代は含みません。
上限を超える分は、受け入れ企業か監理支援機関が負担するとQ&Aで説明されています。本人の借金を減らすための決まりですが、会社から見れば、入国までの費用の一部が会社側に移る可能性があるということです。金額の具体的な見積もりは、次回あらためて扱います。
5. 変わらないところ ~計画の認定、監理する機関、会社ごとの人数枠~
名前と担い手は変わっても、会社がする手続きの骨組みは技能実習とよく似ています。
計画の認定を受けてから入国する
技能実習計画の認定に代わって、育成就労計画の認定を受けます。認定するのは、外国人技能実習機構から名前の変わる外国人育成就労機構です。
この認定は、施行日前の申請が2026年9月1日から受け付けられています(入管庁Q&A)。
監理する機関が間に入る
監理団体は「監理支援機関」に変わり、新たに許可を受け直す必要があります。外部監査人を置くことが許可の条件になり、受け入れ企業と密接な関係のある役職員は、その企業の監理に関われなくなります(改正法の概要)。
施行日前の許可申請は2026年4月15日から始まっています。今お付き合いのある監理団体が監理支援機関の許可を申請しているかは、受け入れ企業が確かめておくべき点です。「その監理団体は2027年4月も続けられますか」で確認のしかたを書きました。
人数枠は常勤職員数で決まる
1社で受け入れられる人数は、技能実習と同じく、受け入れ企業の常勤職員の数に応じて決まります。優良と認められた会社で枠が広がる仕組みも残ります。
ただし介護のように、分野ごとに上乗せの決まりがあるところもあります。自社の枠を数えるときは、分野別運用方針もあわせて見る必要があります。
6. 今から採る人は、技能実習と育成就労のどちらで入るのか? ~入国の時期で分かれる~
答えは、技能実習計画の認定を申請した日と、実習を始める日で決まります。
厚生労働省の「育成就労制度の施行に伴う技能実習の経過措置について」では、2027年3月31日までに技能実習計画の認定を申請し、施行日から3か月以内に技能実習を始める人は、施行後も技能実習生として入国できるとされています。
日付を並べると、次のようになります。
- 2026年9月1日:育成就労計画の施行日前申請の受付が始まる(すでに始まっています)
- 2027年3月31日:経過措置で技能実習計画の認定を申請できる期限
- 2027年4月1日:育成就労の施行
- 2027年6月30日:経過措置で技能実習を始められる期限
時期を当てはめると
たとえば、2026年の秋に面接し、2027年2月に技能実習計画の認定を申請して、2027年5月に入国する人。この人は技能実習1号として入れます。
ただしOTITが2026年1月16日に公表したとおり、技能実習3号へ進めるのは2027年4月1日時点で2号を1年以上している人だけです。この人は1号1年と2号2年の3年で満了し、その先は特定技能1号への移行を考えることになります。
一方、2027年7月以降に働き始める人は、育成就労で入ることになります。計画の認定、日本語のA1、送出手数料の上限といった新しい決まりがそのままかかります。
なお、認定の審査には時間がかかります。2027年3月31日は「申請を出せる最後の日」であって、その日に出して間に合う保証はありません。当組合では、技能実習で入れる場合の認定申請は2027年2月までを目安にご案内しています。
ミャンマー人材の場合の注意
育成就労で外国人を受け入れるには、相手国との協力覚書が前提になります。2026年10月14日時点で覚書を結んだのは5か国で、ミャンマーとはまだ結ばれていません。
そのため、MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、2027年の春までに人が要る工場には「技能実習で今から動く」ことを、2027年夏以降の増員や補充は「育成就労で計画を立てておき、覚書の動きを見て確定する」ことをおすすめしています。待つことにすると、待つ理由そのものが確定していないからです。
7. おわりに ~受け入れ企業が今すること~
育成就労は、技能実習の名前を変えただけの制度ではありません。目的が「人を育てて残ってもらう」に変わり、それに合わせて転籍・日本語・費用が変わります。一方で、計画の認定・監理する機関・人数枠という手続きの骨組みは残ります。
いま受け入れ企業がすることは、次の4つです。
- 今いる実習生ごとに、2号の開始月と満了予定月を名簿に書き出す
- 2027年夏までに何人必要かを決め、技能実習で入れる分は2027年2月までの申請を目安に動く
- 自社の作業が、育成就労のどの分野・業務区分に入るかを確かめる
- 今の監理団体が、監理支援機関の許可を申請しているかを聞く
次回は、育成就労にかかる費用を取り上げます。送出機関の手数料の上限が、会社の負担をどう変えるかを、技能実習と比べて見ていきます。
ご相談のときは、業種、2027年度に必要な人数、今いる実習生の人数と入国した月、寮があるかどうかを教えてください。それだけで、技能実習で入れる分と育成就労で入れる分の線をどこに引けばよいか、一緒に日程に落とせます。受け入れは2名から、三重県・東海地方を中心に、ミャンマー人材の紹介から配属後の巡回まで担当しています。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)
MOOZ公式サイト
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