食品工場の育成就労は、契約の前に昇給の道筋を紙で渡す

食品工場の育成就労は、契約の前に昇給の道筋を紙で渡す

雇用契約の前に、会社が1枚渡す決まりです

食品工場が育成就労で人を迎えるときは、雇用契約の前にキャリアアッププランを書面で渡して説明します。農林水産省の告示が定めた条件で、2027年4月1日から適用されます。

2026年10月9日には、農林水産省が見本になる資料を公表しました。弁当・惣菜・水産加工の工場で、来年春以降の受け入れを考えている会社に関係します。

キャリアアッププランとは、仕事の段階と、段階が上がったときの役職や賃金を本人に示す計画のことです。告示は、職業能力の向上と「将来の職務上の地位及び賃金をはじめとする処遇の向上」を図るための計画、と書いています。

根拠は令和8年農林水産省告示第649号の第1条です(2026年4月30日付)。

📄 出入国在留管理庁の資料(PDF)

育成就労は施行前の制度です。この記事は現時点の情報で、政省令や運用で変わる可能性があります。

この記事のポイント

10月9日に何が出たのか

出たのは2つです。分野の運用要領と、「飲食料品製造業分野における育成・キャリア形成プログラム」です。

運用要領は、法務省・厚生労働省・農林水産省が10月9日に公表しました。プランについて、様式は自由としたうえで、内容の例を3つ挙げています。

  • 各レベルの業務内容と、習熟の目安となる年数
  • レベルアップするときに必要な経験、実績、資格
  • 職務上の地位や賃金などの処遇の向上

📄 出入国在留管理庁の資料(PDF)

プログラムのほうは、国が描いた道筋の図です。育成就労が1〜3年目、特定技能1号が4〜8年目、特定技能2号が9年目からと置かれています。

段階 年数の目安 技能の試験 日本語
育成就労 1〜3年目 1年目に基礎級または初級、3年目に3級または専門級 開始までにA1相当、就労中にA2.2相当
特定技能1号 4〜8年目 就労中に特定技能2号評価試験 開始時にA2.2相当、就労中にB1相当
特定技能2号 9年目〜 2号評価試験に合格して開始 B1相当以上

出所は農林水産省の資料です(2026年10月9日掲載)。

📄 農林水産省の資料(PDF)

A1やB1は「日本語教育の参照枠」という物差しの段階です。運用要領では、A1相当は日本語能力試験(JLPT)のN5以上、またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)のA1相当以上とされています。

特定技能1号の欄には、「工程を管理する者としての就労年数:2年」とも書かれています。2号へ上がる人には、ラインを任せた期間が要るという見立てです。

賃金表が無い会社は、何を書けばよいのか?

決まった様式は無いので、今ある事実から書けます。ただ、賃金の上がり方に触れずに済ませることはできません。告示の定義に、賃金が入っているからです。

もう1つ、賃金に関わる決まりがあります。飲食料品製造業の転籍制限期間は2年です。転籍制限とは、本人の希望で別の会社へ移れるようになるまでの期間のことです。

1年を超えて設定する会社は、1年目から2年目にかけて所定内賃金を上げます。上げ幅は、食品産業育成就労協議会が毎年決める昇給率以上です。計画で1年と定める道もあります。

つまり、転籍制限を2年にする会社は、2年目の昇給をプランに書くことになります。ここが空欄のままでは、説明になりません。

先月の監査で伺った兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)は、全員が2024年8月の入国でした。それでも日本語はN2からN4まで幅があります。同じ時期に来ても、2年で差がつきます。

この工場を見て、年数だけで段階を区切るプランは現場に合わないと感じました。早い人は待たされ、遅い人は置いていかれます。

MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、「何年目に」ではなく「何に受かったら、何を任せ、いくら上がるか」で書くことをおすすめしています。年数は目安として横に添えます。試験の名前は、上の表のものをそのまま使えます。

MOOZ事業協同組合

誰に関係し、渡さないとどうなるか

関係するのは、飲食料品製造業分野で育成就労を使うすべての会社です。2名でも10名でも、一人ずつに渡して説明します。

渡したことは、計画の申請で確かめられます。運用要領は、確認の書類として「受入れに関する誓約書(飲食料品製造業分野参考様式第1号)」を挙げています。

告示の基準は、育成就労計画の認定基準の一部です。満たしていなければ、計画は認定されません。

水産加工の工場は、説明する項目が増えます。運用要領によると、転籍できる範囲(原則として同じ業務区分の中)を含むキャリアパスと待遇を説明し、本人の同意を得ることが協議会で定められています。

特定技能だけで受け入れている工場も、無関係ではありません。入管庁の分野ページ(2026年9月4日現在)には、特定技能でも同じ条件が載っています。

🔗 出入国在留管理庁のページ

費用の面では、1年目と3年目の試験費用を会社か監理支援機関が負担します。監理支援機関とは、今の監理団体にあたる機関です。10名なら、プランに書いた試験の10人分を見込んでおきます。

年内に決めるのは、2年目と4年目の賃金です

雇用契約書は、計画の認定申請に付ける書類です。プランはその契約より前に要るので、協議会の加入と同じ時期に用意します。

当組合では、次の順でご案内しています。

  • 今いる日本人のパート・社員の賃金が、何で上がっているかを書き出す
  • 転籍制限を1年にするか2年にするかを決める
  • 育成就労3年目の試験に受かった人の、4年目(特定技能1号)の賃金を決める
  • ラインを任せる人に付ける手当があれば、金額と条件を書く

多人数を迎える工場は、3つ目で人件費の見通しが変わります。3年後に全員が特定技能へ移ると、一度に全員の賃金が上がるからです。

「技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか」。当組合にいま一番多い相談です。待つ場合に会社が約束する中身が、このプランで形になります。

相談の前に、賃金表を1枚ご用意ください

最初に確かめるのは、2年目の賃金をいくら上げられるかの1点です。ここが決まると、転籍制限の年数もプランの中身も決まります。

ご相談の際は、作っている品目、受け入れたい人数と時期、今の賃金の決め方をお知らせください。プランに何を書くかのご案内を含めて、手続きをサポートします。受け入れは2名からです。

MOOZ事業協同組合(三重県津市)
MOOZ公式サイト

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