人手不足はこれから本番になる―三重の働き手と外国人が増えた理由―
1. はじめに ~景気が戻っても、働き手の数は戻りません~
「求人を出しても来ないのは、今の景気のせいだろう」。そう考えている経営者の方は少なくありません。
しかし三重県の働き手(15〜64歳の人口。統計では「生産年齢人口」と呼びます)は、2000年から減り続けています。三重県の資料では、2020年の約103万人が、2040年には約79万人になる見込みです。
これは景気の波ではなく、人口の形の話です。食品工場・介護・宿泊など、人の手で回す仕事の多い会社ほど、影響はこれから大きくなります。
この連載では、外国人材の受け入れを考える会社に向けて、判断の材料を1回に1つずつ順に取り上げます。第1回は、働き手の数と、外国人の受け入れがなぜ増えてきたのかです。

2. 三重県の働き手はどれだけ減るのか ~20年で約4分の1~
三重県の働き手は、20年でおよそ4分の1減る見込みです。
県の資料によると、三重県の生産年齢人口は戦後から1990年代半ばまで増え、2000年に減少に転じました。その後は一度も増えていません。
2020年の約103万人から2040年の約79万人へ。差は約24万人です。平均すると、年に約1万2千人ずつ働き手が減る計算になります。
総人口も減ります。三重県が国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の令和5年推計をもとにまとめた資料では、2050年の総人口は約135万人です。2020年の約4分の3にあたります。
ここで見てほしいのは、減る速さの違いです。総人口が4分の3になるのには30年かかります。ところが働き手は、20年で4分の3になります。
つまり、お客さんや利用者よりも先に、働く人が減っていきます。弁当や惣菜を買う人、介護を必要とする人、旅館に泊まる人はすぐには減りません。仕事の量はあまり変わらないのに、それを担う人だけが先に減っていきます。
人手不足が「これから本番」になるというのは、この差のことです。
3. いまの三重の求人倍率は1.20倍 ~もう埋まらない求人が出ている~
人が減るのはまだ先の話ではありません。いまの求人の数字にも、すでに表れています。
三重労働局が2026年10月2日に発表した8月の有効求人倍率は1.20倍でした。全国の1.18倍を4か月続けて上回っています。求人3万35人に対して、仕事を探している人は2万4,971人です。約5,000人分の求人が埋まらない計算になります。
有効求人倍率は景気で上下します。景気が悪くなれば、倍率は1倍を下回ることもあるでしょう。
ただし、倍率が下がっても、働き手の数そのものは戻りません。毎年1万人以上が減っていくので、景気がいいときに求人を出せば、取り合いになる相手はますます少なくなります。
求人倍率の読み方と、外国人材の受け入れをいつ決めるかは、10月11日の記事に書きました。

4. 外国人の受け入れが増えたのはなぜか ~国が制度の目的を書き換えてきた~
外国人の受け入れが増えたのは、国が制度の目的を「技能を教えること」から「人手を確保すること」へ、段階を踏んで書き換えてきたからです。
全国の数字から見ます。厚生労働省が2026年1月30日に公表した「外国人雇用状況」の届出状況では、2025年10月末時点の外国人労働者は257万1,037人でした。前の年より26万8,450人増え、届出が義務になった2007年以降で最も大きな増え方です。外国人を雇っている事業所も37万1,215か所で、過去最多になりました。
三重県では、三重労働局の発表で2021年10月末に3万391人となり、その時点で過去最多でした。2018年10月末の発表では、国籍の上位はブラジル・中国・ベトナムの順でした。
三重県の2025年10月末時点の数字は、三重労働局が2026年1月30日に公表しています🔗 厚生労働省のページ。
なぜここまで増えたのか。制度の流れをたどると理由が見えてきます。
- 1993年 技能実習制度が始まる。目的は、日本で身につけた技能を母国に持ち帰ってもらう「技能の移転」
- 2017年11月 技能実習法が施行される。監理団体が許可制になり、外国人技能実習機構ができる
- 2019年4月 特定技能が始まる。人材を確保するのが難しい分野で、即戦力の外国人を受け入れる
- 2024年6月 育成就労を設ける改正法が成立する
- 2027年4月1日 育成就労の施行予定(現時点の情報では)
技能実習法の第3条には「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」と書かれています。人手不足を補うための制度ではない、という意味です。
ところが現場では、人手が足りない業種ほど技能実習生を受け入れてきました。制度の建前と使われ方がずれていたのです。
2019年の特定技能で、国は初めて「人手不足の分野で外国人に働いてもらう」と正面から制度にしました。食品製造・介護・宿泊などの分野ごとに、受け入れの上限人数も決めています。
育成就労は、その2つをつなぐ制度です。現時点の情報では、目的は「人材の育成」と「人材の確保」の両方とされています。3年で特定技能1号の水準まで育て、そのまま日本で働き続けてもらう流れを、最初から制度に組み込んでいます。
働き手が減ることを前提に、国の制度は「長く働いてもらう」方向へ動いています。次に何が変わるかも、この流れから予想できます。
5. 「今入れるか、待つか」 ~MOOZ事業協同組合の見方~
当組合に届く相談で、いま一番多いのはこの質問です(2026年9月時点)。
技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか
制度の切り替えが近いので、迷うのは当然です。ただ、ここまで見てきた数字からは、問いの立て方を少し変えたほうがいいと私たちは考えています。
働き手は年に1万人以上減っていきます。そうなると、「外国人材を入れるかどうか」よりも、「自社の仕事を、何年後に誰が担っているか」を先に考える必要があります。そのうえで、どの制度を使うかを選ぶ順番です。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、受け入れを考え始めた会社に、まず5年後の人員の見込みを書き出すことをおすすめしています。定年を迎える人、辞めそうな人、増産や新しい施設の予定。これを工程ごとに書き出すと、何人足りなくなるかが数字で見えてきます。
足りない人数が見えると、受け入れ方も決まってきます。1回に何人入れるか、2回に分けるか。寮は何部屋要るか、シフトはどう組むか。当組合は2名から受け入れをお手伝いしていますが、食品工場や介護施設では、何年かかけて人数を増やしていく会社もあります。
外国人材はすぐには来ません。面接、計画の認定、在留の手続き、入国後の講習を経て、ようやく現場に立ちます。人が足りなくなってから動いたのでは間に合いません。
6. おわりに ~受け入れ企業が今すること~
三重県の働き手は、2040年に向けて約4分の3まで減る見込みです。国の制度も、外国人に長く働いてもらう方向へ変わってきました。
受け入れを考える会社が今やることは、次の3つです。
- 工程や部署ごとに、5年後に何人足りなくなるかを書き出す
- 外国人材に任せたい作業と、1回に入れたい人数を決める
- 寮やアパートなど、住まいの当てがあるかを確かめる
次回は、2027年4月に始まる予定の育成就労の基本を取り上げます。技能実習と何が違い、受け入れ企業にとって何が変わるのかを見ていきます。
ご相談のときは、業種と任せたい作業、必要な人数、受け入れたい時期、それに寮があるかどうかを教えていただけると、最初の打ち合わせで具体的な見通しをお伝えできます。三重県・東海地方の食品工場、介護施設、宿泊業の会社からのご相談が多くなっています。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)
MOOZ公式サイト
関連する記事
- 三重の有効求人倍率1.20倍、外国人材をいつ決めるか(2026年10月11日)
- 2027年4月をまたぐ採用計画|実習で今入れるか待つか(2026年9月16日)