ホテルの繁忙期だけ人を増やす、は外国人材ではできません

ホテルの繁忙期だけ人を増やす、は外国人材ではできません

「繁忙期の3か月だけ」という相談から始まることが多い

宿泊業の方からのお問い合わせは、たいていこの形で始まります。夏と年末年始、あるいは団体が続く時期だけ人が足りない。その穴を外国人材で埋められないか、と。

はっきり申し上げると、できません。技能実習も特定技能も、通年のフルタイム・直接雇用が前提の制度です。特定技能で労働者派遣が認められているのは農業と漁業の2分野だけで、宿泊は入っていません。繁忙期に来て閑散期に帰る、という使い方は制度の側が想定していません。

なので、うちはこう案内しています。外国人材は繁忙期の穴埋めではなく、年間を通して回す基幹の人員として入れる。そのうえで、繁忙期の山は日本人のスポット採用と組み合わせて吸収する。 順番が逆だと、閑散期に仕事がない、という形で必ず行き詰まります。

これは負担だけの話ではありません。客室清掃もリネンの仕分けも、人が入れ替わるたびに教え直しが発生する仕事です。3年、5年と同じ人が続くことの効きが大きい職種で、そこに通年の人員を置けるのは、むしろ宿泊・クリーニングに向いた使い方だと考えています。

この記事のポイント

数字は落ち着いている。それでも相談が減らない理由

帝国データバンクの2026年4月調査では、旅館・ホテルの非正社員の人手不足割合は38.5%でした。4年2か月ぶりに3割台に下がっています。全体では正社員の不足が50.6%、非正社員が28.3%。宿泊の非正規不足は、ピーク時に比べればたしかに緩んでいます。

それでも問い合わせが減らないのは、スポットワークや短時間のパートで埋まる仕事と、埋まらない仕事がはっきり分かれてきたからだと見ています。フロントの繁忙時間帯や宴会の配膳は当日の応援でも回りますが、客室清掃の品質管理、リネンの仕上げ、夜勤帯の一人回しは、週に2日来る人では担えません。数字が改善しているのは前者で、後者の穴は残っている。ここが、通年でフルタイムの人を置く判断と重なります。

深夜シフトは、後から足すと止まります

宿泊とクリーニングの受け入れで、いちばん実務が詰まるのがここです。

技能実習では、認定を受けた計画に書いた内容を変えるとき、「変更認定」が必要なものと「軽微変更の届出」で済むものが分かれています。外国人技能実習機構が公表している区分表では、深夜時間帯の労働を新しく加える場合、深夜時間帯を延ばしたり短くしたりする場合、始業・終業の時刻を変える場合は、いずれも変更認定とされています。届出ではありません。認定が下りるまで、そのシフトに入れることはできません。

つまり、こういうことが起きます。日勤で計画を出して配属し、慣れてきたから夜勤に入れよう——ここで止まる。年末の繁忙期に合わせて早番を6時始業に前倒ししよう——ここでも止まる。

だから、うちは計画をつくる段階で「将来入れる可能性のあるシフト」まで聞き取ります。 実際に最初から夜勤に入れるかどうかは別の話で、入れる可能性があるなら計画に書いておく。書いてあるものを使わないのは問題になりませんが、書いていないものを使うのは問題になります。

なお、深夜労働そのものが禁じられているわけではありません。技能実習制度運用要領(令和8年4月版)でも、技能の修得という制度の趣旨から見て合理的な理由がある場合に認定の対象になる、という整理です。宿泊業の夜勤やリネン工場の交替制は、業務の実態として説明がつくことが多い領域です。説明のつくものを、先に書いておくかどうかだけの差です。

MOOZ事業協同組合

クリーニング側は2027年に入口が増える見込みです

リネンサプライについても触れておきます。2026年1月23日の閣議決定で、特定技能の対象分野にリネンサプライが新しく加わりました。育成就労でも同じ分野が対象に位置づけられる方向で資料が出ています(出入国在留管理庁)。実際の受け入れ開始は2027年の予定で、試験や上乗せ基準の細部は政省令・告示で決まります。現時点の情報では、という前置きが外せない段階です。

ホテルの館内クリーニング部門や、宿泊施設向けのリネン工場をお持ちの会社にとっては、これまで技能実習の枠でしか動かせなかったところに、もう一本の道ができることになります。ただ、2027年を待つあいだも人は足りません。今の制度で動かせるものを使いながら、新しい分野の詳細が出たところで切り替えを検討する、という二段構えで考えるのが現実的です。

まとまった人数を入れるなら、寮の面積から逆算する

工場・宿泊で複数名をまとめて受け入れるとき、最初に詰まるのは実は書類ではなく部屋です。

技能実習制度運用要領では、寝室は床の間や押入れを除いて1人当たり4.5㎡以上を確保すること、個人別の収納設備、室面積の7分の1以上の有効採光面積を持つ窓、採暖の設備を設けることが求められています。6畳(約9.9㎡)なら2人まで、という計算です。10名を受け入れるなら、それが入る部屋が先に要ります。

この点、宿泊業には有利な面があります。もともと従業員寮を持っている施設が多く、ゼロから借り上げる必要がない。逆に、客室の一部を寮に転用する場合は面積と設備の要件を先に当ててみてください。ここが合わないと、人数の話が前に進みません。

人数の上限も先に確認しておくところです。技能実習の場合、受け入れ人数は常勤職員数で決まります。常勤30人以下の施設なら1年目は3人まで、監理団体と受け入れ企業の双方が優良と認められればその倍まで。中規模の旅館だと、ここで想定より少ない数字が出ることがあります。

当組合は2名からお受けしています。「2名でいいんですか」と驚かれることが多いのですが、多くの組合が5名からという前提で動いているためだと思います。まず2名で回し方を確かめてから追加する、という入り方は宿泊業と相性がいいと考えています。

早番・夜勤の立ち上げは、通勤から見ています

制度の話から少し離れます。

当組合の巡回では、制度の確認だけでなく交通安全の指導もしています。自転車の乗り方、道路の渡り方を、毎週のように教えている時期があります。母国と交通ルールが違うので、配属直後がいちばん危ないからです。

これが宿泊・クリーニングでは直接効きます。早番は暗いうちに出勤し、夜勤明けは朝の通勤帯にぶつかる。配属してすぐの人を、いきなりその時間帯の通勤に乗せるのは避けたほうがいい、というのがうちの判断です。計画には深夜帯を書いておいたうえで、実際に入れるのは通勤の慣れを見てから。順番を分けて考えられるのは、計画に書いてあるからこそです。

寮についてももう一つ。家庭の事情などで寮に入らず別居している場合、生活面が見えにくくなります。整理整頓や生活リズムが保てているかを巡回で確かめづらく、特に気をつけて見ている点です。夜勤を含むシフトでは生活リズムの崩れがそのまま欠勤につながるので、寮をどう用意するかは、単に部屋を確保する以上の意味があります。

相談の前に用意しておくと早いもの

宿泊・リネンでご相談いただくとき、この4つがあると初回で具体的な話ができます。

  • 年間の稼働カレンダー(繁忙・閑散が月単位で分かるもの)
  • 想定しているシフトの原案。深夜・早朝を含む可能性があるなら、その時間帯も
  • 従業員寮の部屋数と各部屋の広さ(図面があれば図面)
  • 常勤職員数

特定技能で宿泊分野に受け入れる場合は、初めての受け入れであっても宿泊分野特定技能協議会の構成員であることを示す書類が申請時に必要です(観光庁)。加入の手続きを含めた段取りは、こちらで必要書類をご案内します。

MOOZ事業協同組合は三重県津市の監理団体で、ミャンマー人材を専門に扱っています。東海三県を中心に、宿泊・クリーニングを含む受け入れのご相談を受けています。現地の日本語学校からは月次で成績表が届き、配属前の学習と生活の両面が記録として見えるようにしています。

年間のシフト表を一枚お持ちいただければ、そこに何人置けるか、いつから動かせるかまでお話しできます。ご相談は https://mooz-gr.jp から。