10月1日からカスハラ対策が義務になります。実習生も対象
10月1日から義務になるのは2つ
2026年10月1日から、顧客や取引先からの暴言・不当な要求への対応(カスタマーハラスメント対策)と、採用選考中の学生や応募者に対するセクシュアルハラスメントの防止が、すべての事業主の義務になります。根拠は2025年6月11日に公布された労働施策総合推進法などの改正で、厚生労働省は事業主が講ずべき措置を定めた指針を、令和8年厚生労働省告示第51号(カスタマーハラスメント)・第52号(求職者等セクシュアルハラスメント)として公布しています。企業規模による猶予はありません。従業員が1人でもいれば対象で、技能実習生も特定技能で働く人も、この「労働者」に含まれます。
外国人技能実習機構(OTIT)は2026年9月24日、実習実施者と監理団体に向けて厚生労働省のリーフレットを掲載し、この改正を周知しました。実習生を受け入れている会社にとっては、一般の労務の話にとどまらず、実習の適正性を確認される場面で出てくる話になったということです。

何をすれば「措置を講じた」ことになるのか?
指針が求めているのは、大きく5つです。
会社としてカスハラに毅然と対応する方針を決め、社内に知らせること。相談を受け付ける体制を用意すること。実際に起きたときに事実を確認し、被害を受けた人を守る対応をとること。悪質な事案への対処方針(複数人で対応する、通話を録音する、警察や弁護士につなぐなど)をあらかじめ決めておくこと。そして相談者のプライバシーを守り、相談したことを理由に不利益な扱いをしないと明示することです。
窓口を作るだけでは足りません。方針を決める、知らせる、受ける、記録する、までが一続きになっています。厚生労働省は令和8年7月更新のパンフレットで措置の例を示しているので、社内文書の下敷きはそこから取れます。

受け入れ企業で先に詰まるのは「窓口が日本語だけ」
カスハラが起きやすい現場は、宿泊、介護、小売、飲食です。ホテルのフロント、介護施設の来訪者対応。いずれも当組合が多く扱っている業種で、そこに技能実習生や特定技能の人が立っています。食品工場でも、クレームの電話や納品先での対応が発生します。
ここで実務として引っかかるのが、相談窓口の実効性です。特定技能1号は、日本語能力試験N4またはJFT-Basicの合格が在留資格の要件なので、制度上かならず日本語の試験に合格しています。一方、技能実習には日本語の法令要件がありません。同じ職場に両方がいる会社では、相談できる日本語の水準に最初から差があります。窓口の案内文を日本語だけで掲示しても、届かない人がいます。
多人数で受け入れている現場では、もう一段の問題があります。20名30名の規模になると、窓口が総務の1人・平日の日中だけという体制では、交代勤務や夜勤に入っている人は物理的に行けません。人数が増えるほど「誰に言えばいいのか」が曖昧になります。シフト表に窓口の時間を書き込む、寮の掲示は母国語かやさしい日本語にする。そのくらい具体的にしないと、措置は紙の上で止まります。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では
巡回訪問のときに、技能より先に「報告・連絡・相談ができるか」を見ています。掃除に真面目に取り組めるか、困ったことを自分から言えるか。ここができる人は現場でも伸びますが、逆に言えば、言えない人は言えないままです。
配属後には、送り出し機関の先生も入れて、監理団体・日本語学校・送り出しの3者でオンライン面談をすることがあります。「日本に慣れた」「日本人ともうまくいっている」と話す人がいる一方で、反応の薄い人もいます。経験上、そういう人ほど社内の窓口には来ません。
だからMOOZ事業協同組合(三重県津市)では、相談の受け先を会社の中に1つ作って終わりにせず、監理団体と現地の日本語学校という社外のルートも残しておく形をご案内しています。社内窓口だけにすると、上司との関係が絡んだ相談は必ず止まります。逆に社外だけにすると、会社が事実確認をする段階で遅れます。両方を並べて、どちらに言ってもよいと本人に伝えておくのが、いまのところ一番機能しています。
なお現時点の情報では、2027年4月施行予定の育成就労制度でも、受け入れ企業と監理支援機関に人権侵害の防止と相談対応が求められる方向です。詳細は政省令で変わりうるため、入管庁の最新情報をあわせてご確認いただく前提になりますが、ここで作った体制はそのまま持ち越せます。
10月1日までにそろえる4つ
順番はこうです。まず方針を1枚にします。就業規則の本体を変えなくても、付属の社内文書で足ります。次に窓口を「総務まで」ではなく実名と連絡先で決めます。そのうえで周知します。朝礼で口頭、掲示で文字、実習生向けには母国語かやさしい日本語。最後に、相談を受けたときに何を書き残すかの様式を決めておきます。カスハラは「言った・言わない」になりやすく、記録がないと事後対応が成立しません。
加えて、面接を担当する人が複数いる会社は、求職者等セクハラの注意点を先に共有してください。選考の場での不適切な言動は、10月1日からは会社の措置義務違反として扱われます。
放置した場合、事業主は報告徴求や助言・指導・勧告、公表の対象になりえます。外国人材を受け入れている会社の場合はもう一段あって、実習生が外部に相談した事案は、監理団体の監査や機構の実地検査の場面で確認対象になります。
三重県・東海地方で技能実習生や特定技能の受け入れをお考えの方、すでに受け入れていて相談体制の作り方に迷っている方は、方針文のひな形と、母国語での掲示物の例をお渡しできます。10月1日までに間に合わせたい場合、まず現在の就業規則と相談窓口の掲示物をご用意のうえ、MOOZ事業協同組合(三重県津市)までご連絡ください。受け入れは2名からで、多人数の場合の窓口の置き方もあわせてご案内します。
https://mooz-gr.jp