工場の出荷場に、物流倉庫の特定技能は使えるか

工場の出荷場に、物流倉庫の特定技能は使えるか

特定技能の「物流倉庫分野」は、倉庫業者・倉庫業者から作業を請け負う会社・貨物自動車運送事業者のための制度です。倉庫業の登録も運送事業の許可も持たない製造業の会社が、自社工場の出荷場や資材置き場で使うことは、2026年9月18日に入管庁と国土交通省が公表した運用要領の基準からは想定されていません。しかも2026年9月時点では、技能試験も分野別協議会もまだ始まっていないため、今日申し込める制度ではありません。

食品工場や部品工場の方から「倉庫の分野ができたなら、出荷の人手はそれで」という声が出始めています。先にお伝えすると、工場の中の人手は製造の分野で考えるほうが近道です。理由を順に書きます。

9月18日に公表されたもの

入管庁は2026年9月18日、特定技能制度のページで「特定の分野に係る要領別冊(物流倉庫分野)」を公表しました。法務省と国土交通省の共同編集で、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針と、国土交通省告示第787号の中身を、実務の手順として書いたものです。

物流倉庫分野で特定技能1号の外国人が従事できるのは、「物流倉庫において、倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管その他の倉庫内各種作業を実施する業務」です。作業場所の清掃や事務所への報告、台風の前に貨物を動かすといった関連業務は付随的に行えますが、関連業務だけに従事させることは認められていません。

本人の条件は、物流倉庫分野の特定技能1号評価試験の合格と、日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)でA2.2相当以上の合格です。技能実習2号を良好に修了した人は、職種を問わず日本語の試験は免除されます。ただし技能試験の免除はありません。技能実習に物流倉庫と対応する職種がないためです。

なお、物流倉庫分野に特定技能2号はありません。特定技能1号の通算の上限(5年)で終わる前提で計画を立てることになります。

この記事のポイント

受け入れられるのは、どんな会社か?

要領が定める受け入れ先は、次の3つのいずれかです。

一つ目は、倉庫業法に基づく登録を受けた倉庫業者。二つ目は、倉庫業者が営業に使っている倉庫で、その倉庫業者から委託を受けて倉庫作業をする会社です。この場合は、委託元の倉庫業者と一緒に「雇用の継続に責任を負う」旨の協定書を作る必要があります。委託が切れて外国人の雇用契約が終わるとき、倉庫業者が転職の支援を補助する、という内容です。三つ目は、一般貨物自動車運送事業者または特定貨物自動車運送事業者で、自社のトラック(または自社で手配した庸車)が出入りする倉庫で、他人の荷物を有償で扱っている会社です。

裏を返すと、自社製品を保管・出荷しているだけの製造業の会社は、このどれにも当たりません。グループに運送や倉庫の会社があるなら、その会社が雇用主として条件を満たすかどうかを見ることになります。個別の判断は国土交通省物流・自動車局が問い合わせ先になっています。

食品工場では、さらに線が引かれている

食品工場の方に特に見ていただきたいのが、要領のこの一文です。

「包装されていない食品に直接触れる業務に従事することはできません」

仮に条件を満たす会社であっても、盛り付けや計量、パック詰めの前工程など、むき出しの食品を扱う作業は物流倉庫分野の業務になりません。弁当や惣菜、水産加工の現場で人が足りないのは、まさにこの部分のはずです。そこは飲食料品製造業の分野、あるいは技能実習や育成就労の食品製造の区分で考える領域です。

MOOZ事業協同組合

いつから使えるのか

国土交通省のページでは、2026年9月時点で、特定技能1号の技能評価試験の開始時期は「現在調整中」です。受け入れ企業が在留の申請より前に入らなければならない分野別協議会も「設置に向けて調整中」で、加入の要件や費用、受付の開始時期は決まっていません。

つまり、要領は出たものの、試験に受かった人がまだいない状態です。「来年の春の繁忙期に間に合わせたい」という計画には、現時点の情報では乗せにくいと私たちは見ています。

育成就労の物流倉庫分野は、入管庁のサイトに8月28日付で運用要領が掲載され、2027年4月1日から運用開始の予定です。こちらも詳細は政省令や協議会の決定で変わりうるため、現時点の情報として受け止めてください。

人数をまとめて入れたい会社が、先に知っておくこと

倉庫や物流の現場は、繁忙期に10人、20人単位で人を増やしたいという話になりがちです。その発想のまま進めると引っかかる点が二つあります。

まず、派遣は使えません。要領は、物流倉庫分野の特定技能外国人を労働者派遣で受け入れることを認めておらず、派遣した場合も派遣された人を受け入れた場合も、以後5年間は特定技能外国人の受け入れができなくなると明記しています。人を集める方法として派遣会社に頼むことは、この分野では最初から選択肢に入りません。

次に、設備の条件があります。外国人が働く倉庫で、入庫・在庫・出庫を管理する情報システム(いわゆる倉庫管理システム)を使っていること。さらに、それと連携して生産性や安全衛生を高める機器やシステムを使い続け、その状況を協議会に加入してから1年以内に報告すること。紙の台帳で回している倉庫は、人を入れる前に仕組みの整備が要ります。

このほか、本人から求められたら実務経験を証明する書面を渡すことも、受け入れの条件になっています。支援を登録支援機関に委託する場合は、その機関も物流倉庫分野の協議会に入っている必要があります。

工場の人手は、どの制度で考えるか

いま、MOOZ事業協同組合(三重県津市)にいちばん多い相談は「技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか」です。物流倉庫分野の話が出てから、この相談に「倉庫のほうはどうか」が加わるようになりました。

私たちの案内はこうです。製造ラインや盛り付け、検品、梱包など工場の中の作業に人が要るなら、まず製造の分野(技能実習・育成就労の食品製造や、特定技能の飲食料品製造業・工業製品製造業)で組み立てる。物流倉庫分野は、倉庫業や運送業を営む会社、またはグループ内にそうした会社がある場合に、別の計画として検討する。一つの制度で工場と倉庫の両方をまかなおうとすると、業務の範囲から外れる作業が必ず出てきます。

技能実習は2027年4月をまたぐ受け入れ計画の締め切りが迫っています。工場側の人手を先に固めるなら、判断は今年のうちが目安です。

相談の前に、手元で確かめておくこと

ご相談いただくときは、次の点が分かっていると話が早く進みます。人手が足りない作業の中身(食品に直接触れるか、梱包済みの品を動かすか)、その作業をしている会社が倉庫業の登録や運送事業の許可を持っているか、必要な人数と時期、寮を用意できるか。

MOOZ事業協同組合は三重県津市を拠点に、東海・近畿の食品製造、介護、縫製・電子部品組立、宿泊、溶接・自動車部品の会社でミャンマー人材の受け入れをお手伝いしています。受け入れは2名からで、複数名をまとめて迎える場合の寮やシフトの組み方もご相談いただけます。特定技能への移行や支援は、グループの株式会社NADy(登録支援機関)が担当しています。

工場の作業をどの制度で考えるか迷っている段階でも構いません。上の4点をお持ちのうえで、https://mooz-gr.jp からご連絡ください。