技能実習生の寮費、給与から引けるのはいくらまでか

技能実習生の寮費、給与から引けるのはいくらまでか

借上げアパートなら、家賃を入居人数で割った額まで

技能実習生の寮費として給与から引ける額には上限があります。アパートを借り上げる場合は、家賃(管理費・共益費を含む)を、入居する実習生の人数で割った額までです。敷金・礼金・保証金・仲介手数料は、この計算に入れられません。根拠は技能実習制度運用要領と、計画認定の申請で提出する「技能実習生の報酬・宿泊施設・徴収費用についての説明書」(参考様式第1-16号)の記載です。

計算例を置きます。家賃60,000円、共益費3,000円の部屋を借り上げ、実習生3人が入るとします。63,000円を3で割って、1人あたり21,000円。これが上限で、21,000円以内なら設定できます。契約時に払った礼金や仲介手数料は、会社の負担のままです。月々の寮費に少しずつ乗せて回収する、という設計はできません。

居住費とは、実習生が定期に負担する費用のうち住まいにかかる部分のことで、技能実習法の施行規則は「実費に相当する額その他の適正な額」であること、本人がその内容を十分に理解して合意していることを求めています。相場より安いかどうかではなく、実費を超えていないかで見られます。

この記事のポイント

人数が変わると上限も動く

多人数を受け入れる会社で抜けやすいのは、ここです。

先ほどの部屋に4人目が入ると、63,000円÷4で上限は15,750円に下がります。3人のときの21,000円をそのまま引き続けると、4人分で84,000円を集めることになり、家賃を21,000円上回ります。2期生を同じ寮に入れた月、控除額を直さないまま給与計算が回ってしまう。増員のときに起きやすい形です。

逆に、1人が帰国して2人になれば上限は31,500円に上がります。ただし、上限が上がったからといって控除額を上げられるわけではありません。本人に示した雇用条件と説明書の金額があり、変えるなら本人への説明と合意が要ります。MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、人数が減ったときは控除額を据え置き、空いた分は会社が持つ形を基本に案内しています。本人に責任のない理由で手取りが減ると、説明がつかないからです。

10名、20名と受け入れる場合は、物件が複数になります。家賃も部屋の人数も物件ごとに違うので、当組合では物件ごとに計算した表を1枚作り、入居者が動くたびに更新する方法をすすめています。全物件の家賃を合計して全員で割る方法が認められるかどうかは、当組合では運用要領の記載から確認できていません。その形を取りたい場合は、申請前に外国人技能実習機構(OTIT)の地方事務所へ確認してください。

寝室の広さにも基準があります。床の間・押入れを除いて1人あたり4.5㎡以上です。上限額の計算より先に、その部屋に何人まで入れられるかが決まります。

自社の寮や社宅の場合

会社が所有する寮や社宅では、割り算の元になる家賃がありません。運用要領は、実際に建設・改築などに要した費用、物件の耐用年数、入居する実習生の人数などを勘案して算出した「合理的な額」としています。

決まった計算式が示されているわけではないので、会社が自分で根拠を説明することになります。当組合では、建設や改築にかかった費用を耐用年数と月数で割り、さらに定員で割るという考え方で、計算の過程を紙1枚に残してもらっています。近隣のアパート相場に合わせた、という決め方では説明になりません。古い社宅で取得費がほとんど残っていない場合、設定できる額はかなり小さくなります。

MOOZ事業協同組合

水道光熱費と食費はいくらまで引けるか?

水道光熱費は、電気・ガス・水道の事業者に実際に払った額を、その宿泊施設に同居している人数で割った額までです。同居人数には、実習生以外の人(会社の関係者やその家族)も含めて数えます。

毎月の請求額は動くので、定額で引いていると、実費を上回る月が出るおそれがあります。当組合は、請求書の額を人数で割ってその月の額を出す実費精算を案内しています。手間はかかりますが、監査で聞かれたときに請求書を見せれば済みます。

食費は提供の仕方で分かれます。食材や宅配弁当を渡す場合は、購入に要した額以内。社員食堂で出す場合は、実習生以外の従業員から取っている額以内。会社で食事を作って出す場合は、材料費・水道光熱費・人件費などの合計を、食事の提供を受ける人数(実習生に限らない)で割った額以内です。

どの費目も、給与から差し引くには労働基準法第24条にもとづく労使協定が必要です。

特定技能と育成就労ではどうなるか

特定技能1号でも、家賃の考え方は同じです。入管庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」は、借上げ物件なら借上げ費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料等は含まない)を入居人数で割った額以内、自己所有物件なら建設費・耐用年数・人数を勘案した合理的な額としています。

違うのは広さです。特定技能1号の居室は1人あたり7.5㎡以上が求められます。技能実習2号などから特定技能1号に移り、会社がすでに確保している社宅に本人が住み続けたいと希望する場合は、寝室1人あたり4.5㎡以上を満たしていれば足ります。実習を終えた人をそのまま特定技能で雇い続ける工場や施設なら、今の寮を使えます。特定技能で新しく採る人は7.5㎡で部屋を数え直します。

育成就労(2027年4月施行予定)については、現時点の情報では、入管庁と厚生労働省が2026年4月にまとめた「育成就労制度運用要領」で、寝室1人あたり4.5㎡以上の確保と、宿泊費を適正な額にすることが求められています。細部は今後の改正で変わりうるので、申請の時点で最新の運用要領を見てください。

育成就労では本人の意向による転籍が認められます。当組合が入国前の実習生に禁煙の約束を説明するとき、健康の話としてではなく、寮の火事のリスクと本人のお金の話として伝えています。お金の話は、いちばんよく通じます。来日した人が比べるのも、額面より寮費や光熱費を引いた後の手取りです。寮費の根拠を日本語で説明できる状態にしておけば、監査にも、本人からの質問にも答えられます。

寮を決める前に手元にそろえるもの

物件を決める前に、次の4点を用意してください。賃貸借契約書の写し(契約前なら家賃と共益費が分かる見積)、寝室ごとの面積が分かる間取り図、物件ごとの入居予定人数、直近の水道光熱費の請求書(すでに誰かが住んでいる寮の場合)です。

この4点があれば、何人まで入れられるか、1人いくらまで引けるかが出せます。複数の物件に分けて10名以上を受け入れる計画なら、物件ごとの一覧にしておくと、増員や帰国のたびに作り直さずに済みます。

三重県・東海地方で受け入れを検討している会社は、この4点を持ってMOOZ事業協同組合(三重県津市)にご相談ください。寮の候補が決まる前の段階でも、部屋数と人数の組み方から一緒に確認します。連絡先は https://mooz-gr.jp にあります。