縫製・電子部品の女性実習生が続く工場は、何を決めているか
続く工場が最初に決めている3つのこと
縫製や電子部品組立の工場で女性実習生が続くかどうかは、受け入れ側が配属前に3つを決めているかで差が出ます。働いた時間を機械で記録すること、月の手取りが読める給与にすること、寮と班分けを先に決めることです。このうち前の2つは、国が繊維業の特定技能に課している追加要件と同じ内容です。2024年3月29日の閣議決定で繊維業が特定技能の対象に加わった際、経済産業省は繊維業だけに4つの要件を付けました。
「女性は細かい作業に向いているから続く」という説明をよく見かけますが、私たちはそうは案内していません。ミシンも基板のはんだ付けも、向き不向きは人によります。続くかどうかを分けているのは、作業の相性よりも、働いた分がきちんと数えられているか、来月いくら残るかが本人に見えているか、のほうです。

繊維業の特定技能に付いた追加4要件とは?
繊維業の追加4要件とは、特定技能で繊維業の外国人材を受け入れる企業に対し、分野共通の条件に上乗せして求められる4つの条件です。経済産業省の資料(2024年4月「特定技能制度における繊維業の追加を踏まえた対応方針について(案)」、2025年4月「特定技能制度・JASTIについて」)では次のように示されています。
- 国際的な人権基準に適合して事業を行っていること
- 勤怠管理を電子化していること
- パートナーシップ構築宣言を実施していること
- 特定技能外国人の給与を月給制とすること
経済産業省はこの要件を置いた理由として、繊維業の技能実習で、時間外労働の賃金不払いなどの法令違反の割合が高かったことを挙げています。国が「ここを直さなければ人を受け入れさせない」と線を引いた項目です。
1つ目の人権基準は、第三者の監査や認証で確認されます。経済産業省は繊維産業向けの監査の仕組みとして JASTI を用意しています。監査は申し込んですぐ結果が出るものではないため、4つの中でいちばん時間がかかります。
この4要件は特定技能の話で、技能実習の受け入れには直接かかりません。ただ、技能実習で3年働いた人を特定技能に切り替えて残すなら、その時点で4つとも満たしている必要があります。3年目の秋に気づいても、監査が間に合いません。
電子部品組立の工場には関係ないのか
電子部品組立は、同じ工業製品製造業分野の中で「電気電子機器組立て」の区分に入ります。繊維業の追加4要件は繊維業だけのもので、電子部品組立の工場にはかかりません。
それでも、MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、電子部品組立の会社にも勤怠の電子記録と、月の手取りが読める給与の形を勧めています。理由は制度ではなく、実習生の側にあります。
実習生は毎月、母国の家族に送るお金を決めて来ています。時給制で、受注の波によって稼働日が減る月があると、その計画が崩れます。会社の都合で休みになった日の扱いが本人に説明されていないと、「働いた時間が減らされた」という受け取り方になります。手書きの出勤簿だと、本人の記憶と会社の記録が食い違ったときに、どちらも証明できません。
縫製も電子部品組立も、納期前に残業が集中しやすい仕事です。残業が多い月ほど、打刻の記録が本人を守り、会社も守ります。
なお、自社が特定技能や育成就労の対象になるかは、作業の内容だけでなく、事業所の産業分類でも決まります。電子部品を扱っていても対象外になる場合があるので、受け入れを決める前に確認が要ります。

巡回で、技能より先に見ているもの
私たちが配属後の巡回で最初に見るのは、縫い目の正確さや組立の速さではありません。掃除と報連相です。
これはミャンマーの日本語学校にいる段階から同じで、校内の掃除に真面目に取り組めるか、報告・連絡・相談ができるかを先に見ています。ここができる人は、現場に出てからも伸びます。備品の修理が得意だった、というような意外な強みが掃除や片付けの場面で見つかることもあります。
縫製や組立のラインでは、これがそのまま不良の出方に表れます。針が折れた、部品が1個足りない、指示書の意味が分からなかった。その場で言える人と、黙って流してしまう人がいます。黙ってしまう原因は性格だけではなく、「誰に言えばいいのか」が決まっていない職場の側にもあります。
続いている工場は、ここを人任せにしていません。ラインごとに「困ったらこの人に言う」という相手を1人決め、朝の5分で前日の不良を一緒に見ています。特別な仕組みではありませんが、決めている会社と決めていない会社で、半年後の表情が違います。
日本語の伸び方にも幅があります。2026年9月16日に監査で伺った兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)では、全員が2024年8月の入国なのに、日本語はN2からN4まで分かれていました。同じ時期に来ても、2年で差がつきます。縫製でも電子部品でも、全員に同じ指示書を渡して終わりにせず、進んでいる人に通訳役や検品の補助を任せると、本人の張り合いにもなり、周りも助かります。
10名規模で受け入れるなら、寮と班分けが先
多人数の受け入れでは、配属前に決めることが増えます。寮の部屋割り、ラインへの配置、残業の順番です。
寮については、巡回で5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)が身についているかを見ています。集団生活をしている人は様子が分かりやすく、問題が小さいうちに気づけます。入国前から決めている約束もあります。たとえば禁煙は、健康の話としてではなく、寮の火事のリスクと本人のお金の話として説明しています。そのほうが本人に通じます。
班分けでは、同じ寮の人を全員同じラインに固めるか、分けるかで迷う会社が多いです。うちでは、最初の3か月は2〜3名ずつ組にして日本人の担当を付け、慣れてから分ける形を案内しています。1人だけ別ラインに置くと、分からないことを聞く相手がいなくなります。
人数が増えるほど、勤怠の電子記録は手間を減らします。10名分の手書き出勤簿を毎月集計し直す時間は、打刻の仕組みを入れる費用と比べる価値があります。
育成就労になると、続かない工場は人が移る
2027年4月1日に始まる育成就労では、現時点の情報では、一定の期間が過ぎて技能と日本語の条件を満たした人は、本人の希望で同じ分野の別の会社に移れるようになります。技能実習では原則として認められていなかった動きです。
繊維業については、現時点の情報では、育成就労でも協議会で決めた事項への対応が受け入れ企業に求められる方向です。特定技能の4要件と同じ内容になるかどうかは、経済産業省と入管庁の最新情報で確認してください。
制度がどう決まっても、方向は同じです。働いた時間が正確に記録され、給与が安定し、困ったときに言える相手がいる。この3つがない工場からは、人が移れるようになります。
縫製・電子部品組立の会社が、相談の前に手元に置くもの
受け入れを考え始めた段階で、次の3つが分かると話が早く進みます。
1つ目は、いまの勤怠の取り方です。手書きか、タイムカードか、打刻データがそのままパソコンに入る形か。2つ目は、給与が時給制か月給制か、会社都合の休業日をどう扱っているか。3つ目は、寮にできる物件の有無と、工場までの通い方です。
縫製の会社で、3年後に特定技能で残すことまで考えるなら、人権基準の監査をいつ受けるかも早めに決めておく話になります。
MOOZ事業協同組合は三重県津市の監理団体で、ミャンマー人材を専門にしています。受け入れは2名からです。「2名でいいんですか」と驚かれることが多いのですが、縫製・電子部品組立でも、2名から始めて翌年に増やす会社があります。初期費用と月額監理費は、人数と職種を伺ったうえで実額でお伝えします。特定技能への切り替え後の支援は、グループの株式会社NADy(登録支援機関)が担当します。
三重県・東海地方の工場であれば、現場を見せていただくところから始めます。自社の作業が対象になるか、必要書類のご案内も含めて、https://mooz-gr.jp からご連絡ください。