育成就労の3年間③ 2年目―転籍できる時期と選ばれる会社―
育成就労の2年目は、本人の希望で職場を移る「転籍」ができるようになる人が出てくる時期です。いつから移れるかは分野ごとに1年か2年で決まり、移るには技能と日本語の試験に受かっている必要があります。
この回は、これから育成就労で受け入れる工場・介護施設・宿泊施設の社長や人事の方に向けて書いています。2年目に会社がすることは、引き止めの工夫ではありません。「ここで3年目を迎える理由」を、本人に紙で見せることです。
前回(②)は1年目の仕事と日本語の基礎、1年目の終わりの試験を扱いました。今回はその続きです。
1. 「2年目になれば誰でも移れる」は誤解 ~条件は3つある~
よく聞く心配に「育成就労になると、1年で辞めて他社へ行かれる」があります。実際は、本人の希望だけで移れるわけではありません。
出入国在留管理庁の有識者会議の資料(育成就労制度における本人意向による転籍の制限(案))では、本人の希望による転籍に次の条件を挙げています。
- 同じ会社で、分野ごとに決める期間(転籍制限期間)を超えて働いていること
- 技能検定基礎級、またはそれに当たる育成就労評価試験に受かっていること
- 日本語の試験に受かっていること(水準はA1相当から特定技能1号に必要な水準までの範囲で、分野ごとに決める)
このほか、移る先が同じ業務区分であること、移る先の会社が基準を満たしていることも求められます。
転籍制限期間とは、本人の希望で職場を移れるようになるまでに、最初の会社で働く期間のことです。

2. 自社の分野は1年か2年か ~2025年9月の案では食品製造と介護は2年~
転籍制限期間の考え方は、2025年3月11日に閣議決定された基本方針に書かれています。「1年とすることを目指しつつ、当分の間、分野ごとに1年から2年までの範囲で決める」というものです。
2025年9月に有識者会議で示された案では、次のように分かれていました(秋田魁新報 2025年9月17日の報道、入管庁の資料)。
2年とする案の8分野は、介護、建設、工業製品製造業、造船・舶用工業、自動車整備、飲食料品製造業、外食業、資源循環です。
1年とする案の9分野は、ビルクリーニング、リネンサプライ、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、林業、木材産業です。
各分野の最終的な期間は、分野別運用方針で決まります。現時点の情報では、受け入れる分野の分野別運用方針で期間を確かめてから日程を組むことをおすすめします。
3. 2年とする分野は、1年たった後に昇給の仕組みが要る
期間を2年にする分野には、もう一つ条件があります。基本方針では、1年を超える期間を定める場合、1年経過後に昇給その他の待遇の向上を図る仕組みを求めています。
食品工場や介護施設は、案のとおりなら2年の分野です。転籍まで1年長く働いてもらう代わりに、2年目の始まりに給与が上がる仕組みを用意する、という組み立てです。
昇給の幅や形は分野別運用方針で示されます。ここでは「2年目の始まりに、何かを上げる約束が要る」とだけ押さえてください。

育成就労の転籍は、いつから実際に起きる?
育成就労は2027年4月1日に始まる予定です。施行日から働き始めた人で数えると、1年の分野では早くて2028年春以降、2年の分野では2029年春以降に、転籍の条件がそろう人が出てきます。
ただし、期間をいつから数えるか(入国後の講習の扱いなど)は、運用要領で確かめる必要があります。日程はこの目安を前提に、余裕を持って組んでください。
転籍で人を受け入れる会社は、最初の会社に初期費用の一部を補てんする仕組みが設けられます。具体の額は、当組合では2026年10月時点で確認できていません。
4. よく育った人から、移れる条件がそろう
ここからは監理団体として見ていることです。
転籍の条件は「試験に受かっていること」です。つまり、しっかり育てた人ほど、早く移れる状態になります。会社が教育に力を入れるほど、選ばれる理由も同時に問われます。
2年目は、同じ時期に来た人のあいだで差がはっきり見えてくる時期でもあります。
兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)の監査で。全員2024年8月の入国ですが、2年たつと日本語の伸び方に差がついていました。
これは技能実習の現場の話です。それでも、育成就労の2年目に何が起きるかをよく表しています。伸びた人には次の目標が要ります。伸び悩む人には、つまずいている場所に合わせた手当てが要ります。全員に同じ声かけをしていると、どちらの人にも「ここにいる理由」が届きません。
当組合で入国する女性の多くは、入国の時点でN3・N2を持っています。日本語の試験の条件は早くそろいやすい人たちです。だからこそ、2年目の過ごし方を会社と一緒に決めておきたいと考えています。
5. 2年目の初めに渡す1枚 ~昇給の基準と、次の目標~
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、受け入れ企業に、2年目の初めに1枚の紙を本人に渡すよう案内しています。書くのは次の3点です。
- 2年目に上がる給与の額と、その次に上がる条件
- 3年目の終わりに受ける試験(特定技能1号へ進むための技能と日本語)と、それまでの日本語の目標
- 困ったときに、社内の誰と、監理支援機関の誰に相談すればよいか
口頭で伝えた昇給は、通訳を介すと記憶が人によってずれます。紙で母語訳を添えておけば、本人が家族に見せることもできます。
多人数を受け入れる工場や施設では、寮の部屋割りやシフトの組み方も2年目に見直す時期です。同じ時期に来た人がまとまって条件をそろえるので、1人が移ると周りも揺れます。リーダー役を任せられる人を2年目に決めておくと、後から来る1年目の人の受け入れも回りやすくなります。
おわりに ~会社がすること~
受け入れる分野の転籍制限期間が1年か2年かを、分野別運用方針で確かめてください。2年の分野なら、2年目の始まりの昇給を就業規則や賃金規程にどう書くかを、受け入れ前に決めておくことになります。
次回は「3年目―特定技能1号への試験と、移行の日程」です。
ご相談のときは、業種・受け入れたい人数・働き始めてほしい時期の3つを教えてください。当組合からは、その分野で転籍が起きうる時期を入れた3年間の日程と、費用の内訳をお返しします。
入口は「30分無料オンライン相談」です。
MOOZ公式サイト
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