育成就労の3年間① 入国まで―計画の認定・A1・講習―
育成就労では、入国した翌週から現場に立つことはありません。
現場に立つまでに通る関門は3つあります。育成就労計画の認定、就労前の日本語(A1相当)、入国後講習です。施行規則では、入国後講習は原則320時間以上です。日本語の試験に合格している人は220時間以上になります(2025年9月30日公布の育成就労法施行規則)。
この回は、2027年4月以降に育成就労で初めて人を受け入れる工場・宿泊・介護の会社に向けて書いています。決めることを時系列に並べました。
1. はじめに ~「入国=働き始め」ではない~
採用の相談でよく出る思い込みがあります。
「面接して入国すれば、すぐ人手が増える」というものです。
実際には、入国から配属まで1か月から2か月ほどの講習の期間があります。この間、会社の人員には数えられません。
食品工場で繁忙期に合わせて人を増やしたい会社や、介護施設で夜勤の人数を組みたい会社は、ここを読み違えるとシフトが1〜2か月ずれます。
育成就労とは、3年間の就労を通じて、特定技能1号の水準まで人を育てる制度です。2027年4月1日に施行されます(出入国在留管理庁・厚生労働省)。この連載では、その3年間を順に追います。1回目は「受け入れ前から入国まで」です。
詳細は政省令や運用要領の改訂で変わることがあります。以下は現時点の情報では、という前提で読んでください。

2. 最初に決めること ~何月に何人、どの分野で~
計画の申請より先に、会社の中で決めることが3つあります。
1つ目は、受け入れたい仕事が育成就労の分野に入るかです。食品製造なら事業所の産業分類で決まります。宿泊なら、民泊と簡易宿所は対象外とされています。
2つ目は、人数です。育成就労には会社の規模(常勤の職員数)に応じた人数枠があります。介護では、常勤10人以下の事業所は3人までです。
3つ目は、働き始めてほしい月です。ここから逆算して、すべての日程が決まります。
多人数を受け入れる会社は、同じ月に入国する人を1つの組にまとめると進めやすくなります。計画は1人ずつ作ります。それでも、入国日と講習の期間がそろえば、寮の準備・配属・シフトの組み替えを1回で済ませられます。
3. 計画の認定はいつ申請するか ~原則、開始予定日の7〜5か月前~
育成就労計画の認定の申請は、2026年9月1日から施行日前申請として受け付けが始まっています(法務省の案内)。受付は外国人技能実習機構です。施行後は外国人育成就労機構に移ります。
申請の時期について、法務省の審査基準は「原則として育成就労開始予定日の7か月前から5か月前まで」としています。
当てはめると、次のようになります。
2027年4月1日に始めたい会社は、2026年9月1日から11月1日ごろが原則の申請期間です。今日(10月25日)から数えて、残りは1週間ほどです。
2027年7月1日に始めたい会社なら、2026年12月1日から2027年2月1日ごろになります。
申請までに、雇用契約書と雇用条件書、寮の説明書、本人の履歴書と健康診断の結果などをそろえます。面接と内定はその前に済ませておく必要があります。必要な書類は、この連載とは別の「書類の書き方シリーズ」で1枚ずつ書いています。
認定の手数料は申請の前に払います。支払いの方法で金額が変わる点は、9月30日の記事に書きました。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、4月開始を希望する会社には「面接は申請の2か月前まで」と案内しています。書類のやり直しが1回入っても、申請期間に収まるようにするためです。

4. 入国前の日本語は何が要るか ~就労開始までにA1相当~
育成就労では、働き始める前に、A1相当の日本語を示すことが求められます。
A1とは、ヨーロッパで作られた言語の物差しのいちばん下の段です。自己紹介や、ゆっくり話してもらえれば簡単なやり取りができる程度を指します。
示し方は2つあります。
- A1相当の日本語の試験に合格する
- 認定日本語教育機関などで、A1相当の講習を100時間以上受ける
厚生労働省は2026年8月31日付の資料で、「A1相当講習(100時間)」と、その次の「A2目標講習(100時間)」のモデルカリキュラムを示しています。
試験に受かっていない人は、入国後講習の中でこの100時間を受ける形になります。また施行後の当分の間(5年をめど)は、一定の日本語講習をA1相当講習とみなす経過措置があります(法務省「育成就労制度の関係省令等について」)。
当組合で入国する女性の人材は、多くがN3・N2を取得しています。A1よりかなり上の水準です。ただし、計画に書けるのは入管庁が示す「A1相当の試験」に当たる合格だけです。どの試験の証明書を添えるかは、申請の前に確かめています。
5. 入国後講習は何時間か ~原則320時間、試験合格なら220時間~
入国後講習の時間は、施行規則で次のように決まっています。
A1相当の試験に合格していない人は、総時間数320時間以上です。入国前6か月以内に160時間以上の講習を受けていれば、160時間以上に短くなります。
合格している人は220時間以上です。入国前の講習が110時間以上あれば、110時間以上になります。
1日に8時間を超えて講習をしても、8時間として数えます。320時間なら、1日8時間・週5日で8週間です。160時間なら4週間です。
この時間の中に、法的保護の科目が8時間以上入ります。入管や労働の法令に違反されたときにどうするか、を専門の人が講義する科目です。
講習の時間は、日本語の授業だけではない
講習には、日本の生活に必要なことも入ります。
10月9日、当組合の入国後講習で交通ルールの授業をしました。午前は教室で言葉と決まりを教え、午後は県の交通安全の施設で自転車の実技です。
119番の練習では、場所を聞かれて「スーパーです」「マックスバリュです」としか言えない人がいました。
店の名前だけでは伝わらない。「〇〇店」まで言う、信号の地名の表示を読む、近くの日本人に代わってもらう、を練習した。
来たばかりの人は、通話のできる電話を持っていません。だから「周りの人に『助けてください』と言う」を先に教えています。
この授業の最後に「ルールを守ると何がいいですか」と聞きました。返ってきたのは「自分の国のイメージがよくなります」という答えでした。
講習の期間は、会社から見ると「まだ働けない期間」です。それでも、配属してから寮の近くで事故が起きるより、ここで時間を取るほうが会社の負担は小さくなります。
6. 入国の日までに会社がそろえるもの ~寮と、講習明けのシフト~
計画が認定されると、在留資格の手続きを経て入国になります。
ミャンマーとの間では、育成就労の二国間の覚書が、当組合が10月14日に確かめた時点でまだ結ばれていません。ミャンマーからの受け入れの日程は、覚書の動きで変わることがあります。
入国の日までに、会社の側で準備するのは主に2つです。
1つは寮です。講習の期間中から住む場合もあります。寝室の広さや家賃として引ける額には決まりがあり、計画の申請のときに説明書で示しています。その内容のとおりに整えます。
もう1つは講習明けのシフトです。入国日が決まれば、配属日も決まります。複数名を同じ日に配属するなら、指導する日本人の勤務をその週に合わせておきます。
全体の流れを日程で並べると、次のようになります。
| 時期の目安 | すること | 主に動く人 |
|---|---|---|
| 開始予定日の9〜8か月前 | 分野・人数・開始月を決める、面接 | 受け入れ企業・監理支援機関 |
| 7〜5か月前 | 育成就労計画の認定申請 | 受け入れ企業(監理支援機関がサポート) |
| 認定後 | 在留資格の手続き、寮の準備 | 監理支援機関・受け入れ企業 |
| 入国から1〜2か月 | 入国後講習(160〜320時間) | 監理支援機関 |
| 講習の後 | 配属、就労開始 | 受け入れ企業 |
「9〜8か月前」は当組合が案内している目安です。制度で決まった期限ではありません。
7. おわりに ~受け入れ企業がすること~
この回で決めることは3つでした。
- 働き始めてほしい月を決め、そこから7か月さかのぼった月を申請の始まりにする
- 入国前に日本語の試験に受かっている人か、講習で示す人かを確かめ、講習の長さ(160〜320時間)を見込む
- 講習が明ける日に合わせて、寮と指導役のシフトをそろえる
次に確かめる1点は、「開始月から数えて、申請期間がもう始まっていないか」です。4月開始を考えているなら、この1週間が分かれ目になります。
次回は、配属から1年目の終わりまでを追います。1年目の日本語の目標(A2.1相当)と、転籍の制限期間です。
相談のときは、業種と、受け入れたい人数、働き始めてほしい月を教えてください。当組合からは、申請・入国・講習・配属の日程表と、費用の内訳をお返しします。
30分無料オンライン相談はこちらからお申し込みいただけます。
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