育成就労の3年間② 1年目―仕事と日本語の基礎、終わりの試験―

育成就労の3年間② 1年目―仕事と日本語の基礎、終わりの試験―

1. はじめに ~1年目の終わりに、技能と日本語の試験がある~

育成就労は「3年かけて特定技能1号の水準まで育てる制度」です。その1年目は、慣れるための期間ではありません。

厚生労働省の資料では、就労を始めて1年がたつところで、技能検定の基礎級(または育成就労評価試験の初級)と、日本語の試験を受ける流れが示されています。日本語の水準は、A1相当以上からA2相当以上までの範囲で、分野ごとに決まります(現時点の情報では。施行は2027年4月1日の予定です)。

この記事は、これから育成就労で2名以上を迎える工場・介護施設・宿泊施設で、1年目の育て方を決める方に向けて書いています。

前回(①入国まで)では、計画の認定、入国前の日本語(A1相当)、講習までをたどりました。今回はその続き、配属してから1年目の終わりの試験までです。

よく聞く思い込みが1つあります。「試験は3年目の終わりに1回あればよい」というものです。実際には、試験は3年間に2回あります。1回目は1年目の終わりで、ここが2年目以降の土台になります。

この記事のポイント

2. 1年目の終わりの試験は何か ~技能は基礎級、日本語は分野ごとの水準~

技能の試験は、技能検定の基礎級か、それに相当する育成就労評価試験(初級)です。 厚生労働省の「育成就労制度の概要」でも、1年経過時はこの2つのどちらかと整理されています。

試験の水準の考え方は、法務省と厚生労働省が2025年3月11日に出した「特定技能制度及び育成就労制度に係る試験の方針」に書かれています。

日本語の試験は、「日本語教育の参照枠」という物差しで水準が決まります。A1は、あいさつや自分のことを短く言える段階です。A2は、身近な仕事や生活の話ができる段階です。

1年目の終わりに求める水準は、A1相当以上からA2相当以上までの範囲で、分野ごとに決まります。食品製造・介護・宿泊で同じとは限りません。自社の分野の水準は、分野ごとの運用方針で確かめる必要があります。

流れを並べると、次のようになります。

  • 就労開始の前:A1相当の試験に合格、または相当する講習を受ける
  • 就労開始後1年経過時:技能検定基礎級等 + 分野ごとの日本語試験
  • 就労中:A2相当の講習を受ける
  • 育成就労の終わり:A2相当の日本語試験と技能の試験(特定技能1号へ移るための水準)

不合格だったときの扱い(再受験の機会や、その間の在留の続け方)は、2026年10月26日時点で当組合が確かめられた公表資料では、読み取れませんでした。運用要領の該当箇所を確かめ、分かった段階でこの連載で書きます。今の段階で「落ちても大丈夫」とも「落ちたら帰国」とも言えません。

3. なぜ1年目に試験を置くのか ~転籍の条件とつながっている~

1年目の試験は、本人の希望で職場を移る「転籍」の条件とつながっています。

入管庁の資料「育成就労制度における本人意向による転籍の制限(案)について」では、本人意向の転籍には、技能検定の基礎級(または相当する評価試験)と、分野ごとに決める日本語試験への合格が必要とされています。日本語の水準は、A1相当から特定技能1号に移るのに必要な水準までの範囲で、分野別の運用方針で決めます。

転籍を制限する期間は、分野によって1年から2年です(この連載の10月19日の記事で詳しく書きました)。

ここから読み取れるのは、制度の考え方です。技能実習では、同じ会社で決まった年数を働くことが前提でした。育成就労では、決まった力が身についた人に、次の選択肢が開く形になっています。1年目の試験は、その最初の確認です。

受け入れ企業から見ると、「試験に受かると転籍されるのでは」という心配が出てきます。実際にこの質問は増えています。

当組合の見方は逆です。1年目の試験に受かる人は、2年目に任せられる仕事が増える人です。転籍は、試験に受かったかどうかだけで決まるものではありません。職場の居心地や、2年目に何を任されるかで決まります。

MOOZ事業協同組合

4. 同じ月に入国しても、1年目で差が開く ~監査で見た5人~

兵庫県のそう菜工場(女性5名)は、全員が2024年8月の入国です。これは技能実習の人たちですが、先月の監査で改めて分かったことがあります。同じ時期に来ても、2年で日本語の伸び方に差がついていました。

差が出るのは、入国の時点ではありません。1年目の過ごし方です。仕事中に日本人の従業員とどれだけ言葉を交わすか。寮に戻ってから勉強の時間があるか。分からない言葉を誰に聞けるか。

入国後の講習でも、同じことが見えます。

「何時間寝ましたか」と聞くと、寝た時刻や起きた時刻を答えてしまう。長さ(時間)と時刻(時)の区別は、教えないと身につかない。

当組合から入国する女性の多くは、N3かN2を持って来ます。それでも、こうした取り違えは起きます。教科書の日本語と、職場で使う日本語は別のものです。

現場では「8時間」と「8時」を取り違えると、シフトや作業時間の指示がずれます。1年目に教えるのは、まずこうした職場で毎日使う言葉です。

5. 1年目に職場で決めておくこと ~教える人、教える順番、試験の日~

1年目の育て方は、配属の前に3つ決めておくと迷いません。

1つ目は、誰が教えるかです。育成就労では、計画に指導の担当者を置きます。ただ、毎日そばで教えるのは現場のリーダーです。工場なら、ラインごとに1人、教える人を決めておきます。

2つ目は、教える順番です。基礎級の試験は、その分野の基本の作業と、安全・衛生の知識を確かめるものです。食品工場なら、手洗い・衛生の決まり・刃物の扱いを先に覚えてもらいます。毎日の仕事の順番と、試験の範囲を重ねておくと、試験のための特別な時間を減らせます。

3つ目は、試験の日をいつごろに置くかです。仮に2027年10月に就労を始めた人なら、1年経過は2028年10月です。試験の申し込み、職場での練習、結果が出るまでの期間を考えると、半年前には予定を立て始めることになります。

何人かをまとめて受け入れる会社では、ここに工夫が要ります。

  • 同じ月に入国した人は、試験の時期も重なる。練習や受験の日に、同じラインから何人も抜ける
  • 練習の時間を、シフトのどこに入れるかを先に決める(始業前か、閑散な曜日か)
  • 寮で勉強の時間が取れるか。相部屋なら、夜の過ごし方の決まりも合わせて決める
  • 進み方は一人ずつ違う。全員を同じペースで進めず、遅れている人を早めに見つける

当組合の巡回では、日本語の進み方が一人ずつまったく違うことを毎回見ています。会話は第1課でも、文法は第9課まで進む人がいます。5名を同じ日に迎えても、1年目の終わりには5通りの到達点になります。

6. MOOZ事業協同組合が1年目に案内していること ~試験は2年目の仕事を決める材料~

MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、1年目の試験を「2年目に何を任せるかを決める材料」として使うよう、受け入れ企業に案内しています。

技能の基礎級に受かった人には、2年目に一段上の作業を任せる。日本語の伸びが早い人には、後から来た人への説明役を頼む。こうした役割の決め方を、1年目の終わりに見直します。

当組合から入国する女性の多くは、入国の時点でN3・N2を持っています。そのため、1年目は日本語の試験より、技能の基礎級の準備と職場の言葉に時間を寄せる提案をすることが多くなります。ただし、分野ごとの日本語の水準と本人の力を照らして、一人ずつ決めます。

巡回では、技能より先に、掃除と報告・連絡・相談ができているかを見ています。ここができる人は、試験の準備も自分で進められます。1年目の前半で見えてくる違いです。

7. おわりに ~受け入れ企業が今決めること~

1年目について、受け入れ企業が配属の前に決めておくことは、次の3つです。

  • 自社の分野で、1年目の終わりに求められる日本語の水準を確かめる
  • ラインごとに教える人を決め、試験の範囲と毎日の仕事の順番を重ねる
  • 入国の月から逆算して、練習と受験の日をシフトに入れる

次に確かめる1点は、自社の分野の「1年経過時の日本語の水準」です。 A1相当なのかA2相当なのかで、1年目の日本語の時間の取り方が変わります。

次回は③「2年目―任せる仕事を広げる、転籍とどう向き合うか―」です。

入国の時期と1年目の試験の日程を、自社の場合で当てはめたい方は、ご相談ください。相談のときは、業種と、受け入れたい人数、入国を考えている時期を伝えてください。当組合からは、入国の月から1年目の講習・試験までの日程の目安と、費用の内訳をお返しします。

30分無料オンライン相談の申し込みは、こちらからできます。
MOOZ公式サイト

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