育成就労の3年間④ 3年目と特定技能1号―試験と書類―

育成就労の3年間④ 3年目と特定技能1号―試験と書類―

はじめに ~3年目は「待っていれば特定技能になる年」ではない~

育成就労の3年目に、受け入れ企業がいちばん気にするのは「この人は特定技能1号に移れるのか」です。

先に答えを書きます。移るには、技能の試験と日本語の試験の両方に合格する必要があります。 技能は「技能検定3級など」か「特定技能1号評価試験」。日本語はA2相当(日本語能力試験でいうとN4程度)です。厚生労働省が公表した育成就労制度の資料に、この組み合わせが示されています📄 厚生労働省の資料(PDF)。

関係するのは、2027年4月以降に育成就労で人を入れ、3年後も同じ人に働いてもらいたい会社です。

当組合への相談で、ときどき聞く思い込みがあります。「技能実習のように、3年きちんと働けば試験なしで特定技能に移れるのでしょう」というものです。

技能実習では、2号を良好に修了した人は、特定技能1号の技能試験と日本語試験が免除されてきました。育成就労では、2026年10月時点で公表されている政府資料のどれを見ても、3年目に試験に合格することが移行の条件として書かれています。修了だけで免除される形は、見つけられませんでした。

ここが技能実習との大きな違いです。この回では、3年目に受ける試験、落ちたときの扱い、在留資格を変えるときにそろえる書類を順に見ます。

育成就労は2027年4月1日施行の予定で、試験の細部は分野別運用方針や省令で変わる可能性があります。以下はすべて現時点の情報では、という前提で読んでください。

この記事のポイント

1. 3年目に受ける試験 ~技能と日本語、両方に合格する~

技能の試験は、分野によって選べるものが違います。厚生労働省の資料では、分野ごとに「育成就労評価試験(専門級)」「技能検定3級」「特定技能1号評価試験」の組み合わせが整理されています📄 厚生労働省の資料(PDF)。

たとえば工業製品製造業では、3年目の試験として「育成就労評価試験(専門級)、技能検定(3級)又は特定技能1号評価試験」が並んでいます。溶接・電子部品・自動車部品の工場は、この中から受ける試験を選ぶことになります。

法務省の資料でも、試験の流れは同じ形で示されています📄 出入国在留管理庁の資料(PDF)。

  • 1年目:育成就労評価試験(初級)
  • 3年目:育成就労評価試験(専門級)、または特定技能1号評価試験

3年目に特定技能1号評価試験を使う分野について、厚生労働省の資料には一つ方向が書かれています。1年目の初級試験に受かっていることを、特定技能1号評価試験を受ける条件に組み込むというものです。

つまり、1年目の試験は「通過点」にとどまりません。1年目に受かっていない人は、3年目に受けたい試験を受けられないかもしれません。シリーズ②で1年目の終わりの試験を取り上げたのは、このためです。

日本語はA2相当です。育成就労の始まりから1年以内にA1相当の試験を受け、3年間でA2相当に合格する、という段階が示されています。日本語能力試験ならN4、国際交流基金の日本語基礎テスト(JFT-Basic)でも測れる水準です。

2. 落ちたらどうなるか ~再受験のために最長1年~

政府資料では、移行の試験に不合格だった人には、再受験のために最長1年の在留継続を認める方針が示されています(📄 厚生労働省の資料(PDF) ほか)。

ここは読み違えやすいところです。「3年に1年足して、4年まで育成就労で働ける」制度ではありません。あくまで、試験に落ちた人がもう一度挑戦するための猶予です。

延長の細かい条件(何回まで受けられるか、どの時点の不合格が対象か)は、2026年10月時点で確認できる資料では決まっていません。

MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、この1年を最初から計画に入れないよう案内しています。 延長は落ちたときの保険です。最初から当てにすると、もう一度落ちたときに打つ手が残りません。

MOOZ事業協同組合

3. 何人もまとめて受け入れる会社ほど、受験の時期を1人ずつ決める ~同じ月に入国しても進み方は違う~

監査で見た例を一つ書きます。

兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)。全員が2024年8月に入国した技能実習生です。同じ時期に来ても、2年で日本語の伸び方に差がつきました。

技能実習の話ですが、育成就労でも同じことが起きます。同じ月に入国した5人が、同じ月に試験に受かるとは限りません。

食品工場・宿泊・介護のように、一度に5名、10名と受け入れる会社では、つい「全員まとめて3年目の秋に受験」と決めたくなります。当組合では、全員一律にせず、1人ずつ受験の時期を決めるようにすすめています。

理由は二つです。

一つ目は、早く受かった人から特定技能1号の準備に入れることです。在留資格を変える申請は、受け入れ側の書類もそろえる必要があり、全員分を同じ月に出すと事務が詰まります。

二つ目は、落ちた人の再受験の時間を残すことです。3年目の終わりぎりぎりに初めて受けると、再受験の日程が取れないことがあります。

目安として、当組合では次の順で考えています。

  • 2年目の終わりまでに:日本語のA2相当(N4)に1回目の挑戦
  • 3年目の前半:技能の試験の1回目
  • 3年目の後半:落ちた試験の再受験と、在留資格変更の書類の準備

日本語については、当組合で入国する女性の人材は、多くが入国時点でN3・N2を取得しています。それでも、技能の試験は現場の作業で問われるので、日本語が得意な人ほど早めに技能の試験を受けてもらうほうが、全体の日程に余裕が出ます。

まとめ

4. 在留資格を変えるときにそろえる書類 ~会社が出すもの、本人が出すもの~

試験に受かったら、在留資格を「育成就労」から「特定技能」に変える申請をします。

ここで一つ正直に書きます。2026年10月時点で、育成就労から特定技能1号へ移る人専用の書類一覧は、まだ公表されていません。 以下は、いま特定技能1号への変更申請で使われている書類をもとに、移行で必要になりそうなものを並べたものです。施行後に様式が変わることがあります。

本人について出すもの

  • 技能の試験の合格を証明する書類(合格証明書など)
  • 日本語の試験の合格を証明する書類
  • 健康診断個人票
  • 住民税の課税・納税の証明、国民健康保険・国民年金の納付状況(加入していた場合)

会社が出すもの

  • 特定技能雇用契約書と雇用条件書
  • 報酬に関する説明書(日本人と同等以上であることを示す)
  • 1号特定技能外国人支援計画書
  • 会社の概要と、税・社会保険の納付を示す書類
  • 分野ごとに求められる書類(協議会への加入を示すものなど)

技能実習から特定技能に移るとき、増えて手間取るのは本人の税と保険の書類でした。育成就労でも、3年間住民税や保険料を払ってきた記録を集めることになるはずなので、市役所で取る証明書は早めに頼むほうが安全です。

もう一つ、育成就労で入った人が特定技能1号に移ると、会社には支援計画の実施が求められます。自社で支援するか、登録支援機関に委託するかを、移行の申請の前に決めておく必要があります。当組合のグループでは、株式会社NADy(登録支援機関)が特定技能の支援を担当しています。

5. 3年目の1年を時系列で並べる ~2027年4月に始めた人の場合~

2027年4月1日に育成就労を始めた人で当てはめてみます。

  • 2027年4月:育成就労の開始
  • 2028年3月まで:1年目の終わりの試験(育成就労評価試験の初級、日本語A1相当)
  • 2029年4月:3年目に入る
  • 2029年4月〜2029年秋:技能の試験と日本語A2相当の1回目
  • 2029年秋〜2030年1月:落ちた試験の再受験、在留資格変更の書類の準備
  • 2030年3月:3年間の終わり。この前に特定技能1号への変更申請

いちばん早い人でも、育成就労から特定技能1号に移るのは2030年春ごろです。今いる技能実習生の移行とは時期がまったく違うので、社内で話すときは分けて考えてください。

試験の日程は、分野ごとの実施団体が決めます。年に何回受けられるかは分野によって違う見込みで、2026年10月時点ではまだ出そろっていません。実施日が公表されたら、この時系列に当てはめて逆算することになります。

おわりに ~受け入れ企業が、今から決めておくこと~

3年目のことを今決める必要はありませんが、次の3つは、育成就労で人を入れる前に決めておくと後が楽になります。

1つ目は、自社の分野で3年目に受ける技能の試験がどれになるかです。分野別運用方針で決まるので、確定したら受け入れ前に確かめます。

2つ目は、特定技能1号に移ったあとの支援を誰がするかです。

3つ目は、何人もまとめて入れる場合に、受験の時期を1人ずつ決めることです。

次回は、特定技能1号に移ったあと、通算5年の数え方と、会社がする支援を取り上げます。

自社の分野で3年目に何を受けるか、移行の書類をいつから集めるかを整理したい会社には、手順をまとめたチェックリストをお送りしています。資料請求のときに、業種と受け入れ予定の人数、受け入れを始めたい時期を書いていただければ、その分野で今わかっている試験の組み合わせと、移行までの日程の目安を添えてお返しします。

資料請求は、MOOZ事業協同組合のサイトの「資料請求」からどうぞ。
MOOZ公式サイト

関連する回:育成就労の3年間② 1年目―仕事と日本語の基礎、終わりの試験―/育成就労の3年間③ 2年目―転籍できる時期と選ばれる会社―