1社で114件の認定取消し。技能実習、9月29日の処分

1社で114件の認定取消し。技能実習、9月29日の処分

厚生労働省と出入国在留管理庁は2026年9月29日付で、技能実習計画の認定取消しを16者に、監理団体の許可取消しを1団体に、改善命令を2者に行い、同日公表しました。認定を取り消された会社は、いま働いている実習生の実習を続けられなくなり、取消しの日から5年間は新しい計画の認定も受けられません(技能実習法第10条・第16条)。岡山県の1社は、114件の計画を一度に失っています。

9月29日の処分、理由でいちばん多かったのは何か

厚生労働省の公表資料(別紙1〜19)を当組合で数え直しました。認定を取り消された16者の計画は、合わせて185件です。

取消しの理由(公表資料の記載) 対象
技能実習生の人権を著しく侵害する行為 5者
労働安全衛生法違反で罰金刑が確定 4者
外国人に不法就労活動をさせた 2者
認定計画どおりに技能実習を行わせていない 2者
労働基準法違反で罰金刑が確定 1者
認定計画どおりに賃金を払っていない 1者
機構の職員に虚偽の帳簿書類を提示 1者

東海では岐阜県と愛知県の各1者が含まれていました。三重県の事業者はありません。

改善命令の2者は、賃金を計画どおりに払っていなかった件と、計画どおりに実習を行わせていなかった件です。同じ種類の違反でも、取消しになった会社と改善命令になった会社があります。どこで分かれたのかは、公表資料からは読み取れません。

この記事のポイント

114件を失った会社の理由は「安全」でした

114件の取消しを受けた岡山県の1社の理由は、労働安全衛生法違反で罰金刑が確定したことです。賃金でも残業でもありません。

公表資料には、その違反が実習生に関するものだったかどうかは書かれていません。ただ、取消しの根拠になった技能実習法第16条第1項第7号は「出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」とあるだけで、実習生に関する違反に限る文言はありません。

労働安全衛生法には、機械の安全措置、資格が必要な作業の就業制限、労災が起きたときの報告(労働者死傷病報告)などが定められています。どれも実習生の担当者ではなく、工場長や安全担当が見ている領域です。「実習生の書類は整っている」ことと、「会社として罰金を受けない」ことは、別の話です。

人権侵害の5者についても、公表資料は具体的な行為を書いていません。条文上は、会社や役員だけでなく「職員」の行為も対象です(技能実習法施行規則第12条第1項第8号)。現場のリーダー1人の言動が、会社全体の認定に関わります。

取り消されると、いつまで何ができなくなる?

認定の取消しとは、国が実習計画に出した「この計画で実習を行ってよい」という認定を取り下げる処分です。取り消された計画の実習生は、その会社で実習を続けられません。

今回の処分日は2026年9月29日です。技能実習法第10条は、認定を取り消されてから5年を経過しない者は新しい認定を受けられないと定めています。今回の16者は、2031年9月まで新しい実習生を受け入れられない計算です。

特定技能に切り替えればよい、ともなりません。特定技能の受入れ機関の基準(特定技能基準省令)にも、実習認定の取消しから5年を経過しない者を欠格とする規定があります。

2027年4月に施行予定の育成就労は、この5年のあいだに始まります。現時点の情報では、育成就労法にも計画認定の欠格事由が置かれています。取消しを受けた会社が新制度でだけ受け入れを再開する道は、当組合は見込みにくいと見ています。細部は政省令で変わりうるため、入管庁の最新情報で確かめる必要があります。

MOOZ事業協同組合

人数が多い工場ほど、失うものが大きい

今回の16者を見ると、取消しは「問題のあった実習生1人分」では終わっていません。114件、16件、10件、8件と、その会社の計画がまとめて取り消されています。

実習生を2名受け入れている会社と、20名受け入れている会社では、同じ1回の罰金でも止まるラインの数が違います。食品工場で夜勤と日勤の両方に実習生が入っている、ホテルで客室と洗い場の両方を任せている、介護施設でフロアごとに配置している。こうした先は、ある日を境に全員分のシフトが空きます。

MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、多人数を受け入れる会社ほど、実習生の担当者だけに任せず、工場長・安全担当・総務が同じ情報を持つ形が要ると考えています。

監理団体の許可取消しも1件ありました

同じ日に、大阪府の監理団体1団体が許可を取り消されました。理由は、監査報告書を遅滞なく機構に出していなかったこと、法令の基準に沿った監査をしていなかったこと、違反の事実を隠す目的で虚偽の監査報告書を出したこと、などです(技能実習法第37条第1項第1号・第4号)。

許可を取り消された監理団体は、実習監理を続けられません。傘下の受け入れ企業は、別の監理団体を探して手続きをやり直すことになります。会社に落ち度がなくても、受け入れは一度止まります。

監理団体の監査は、3か月に1回以上、実地で行うと決まっています(施行規則第52条第1号)。現場を実際に見ること、技能実習責任者と指導員から報告を受けること、事業所の設備と帳簿を確認することが、条文に並んでいます。自社に来ている監査がこの中身になっているかは、会社の側からも分かります。

当組合の巡回では、制度の確認だけでなく、自転車の乗り方や道路の渡り方を毎週のように教えています。母国と交通ルールが違うので、配属直後がいちばん危ないからです。工場の中の安全も、書類ではなく現場で見ないと分かりません。

今週、社内で確かめる4点

1つ目は安全です。直近1年の労災とヒヤリハットの記録を出し、労働基準監督署への報告に漏れがないかを見ます。資格が必要な機械やフォークリフトに、資格のない人を就かせていないかも対象です。日本人従業員の分も含めます。

2つ目は賃金です。この秋は最低賃金の改定があります。実習計画に書いた賃金と、実際の支払いがずれていないかを、給与明細と突き合わせます。

3つ目は作業の中身です。繁忙期に、計画にない作業や別の事業所の応援に実習生を回していないか。今回、計画どおりに実習を行わせていないことで2者が取消し、1者が改善命令を受けています。

4つ目は帳簿です。機構の実地検査の前に記録を「整える」ことは、虚偽の帳簿書類の提示にあたりえます。今回、この理由で1者が16件の認定を失いました。記録に不備があるなら、不備があると分かる状態のまま、監理団体に先に相談してください。

処分の原文は、厚生労働省の報道発表「技能実習法に基づく行政処分等を行いました」(2026年9月29日)で公開されています。

三重県・東海地方で10名以上の実習生を受け入れている、またはこれから受け入れる工場・宿泊施設・介護施設の方は、上の4点のうち自社で答えが出なかった項目を持って、MOOZ事業協同組合(三重県津市)までご相談ください。受け入れ人数と、夜勤を含むシフトの組み方が分かる資料があると、話が早く進みます。連絡先は https://mooz-gr.jp にあります。