技能実習生が妊娠したら、会社は最初に何をするか
技能実習生から妊娠を告げられたとき、会社が最初にやるのは、本人がどうしたいかを聞くことです。妊娠を理由に実習を一方的に終わらせることはできず、解雇や帰国の強制は男女雇用機会均等法第9条で禁止されています。出入国在留管理庁・厚生労働省・外国人技能実習機構が連名で出している企業向けリーフレットも、1行目にそう書いています。本人が休業や一時帰国を選んだ場合は、機構に届け出て実習を中断し、あとで再開できます。
女性の実習生を5名、10名と受け入れている食品工場や縫製工場、介護施設では、受け入れ期間の3年のうちに起こりうることです。起きてから調べると、本人も会社も慌てます。
本人が選べるのは3つ
入管庁の「技能実習生が妊娠等した場合の基本フロー」は、本人の希望を3つに分けています。実習を続ける、実習を中断して日本で産む、一時帰国して産む、です。もちろん本人が実習をやめて帰国したいと言う場合もあります。
どれを選ぶかは本人が決めます。会社と監理団体の役割は、実習を最後まで続けられることを先に説明し、そのうえで希望を確認することです。順番が逆になって「どうする、帰る?」から入ると、本人は帰れと言われたと受け取ります。
本人が実習の終了を希望した場合でも、帰国にかかる費用を本人に負担させることは禁じられています。期間満了前に帰国するときは、運用要領の参考様式にある申告書で、本人の意思を書面で確認します。

働き続ける場合、現場で変わること
妊娠中と出産後の実習生を、重い物を扱う作業や有害なガスが出る場所に就かせることはできません。本人から請求があれば、残業・休日労働・深夜労働も外します。妊婦健診に行く時間は会社が確保します。医師から通勤や休憩、作業の制限について指導があれば、それに従います。いずれも労働基準法と男女雇用機会均等法の定めで、日本人の社員と同じ扱いです。
弁当や惣菜の工場で夜勤シフトに入っている人、原料の箱を運ぶ工程にいる人は、配置を変えることになります。実習計画で決めた作業内容から外れる場合は、監理団体を通して機構に相談します。自社だけの判断で別の作業に回すと、計画と違う作業をさせたことになりかねません。
産休を取ると実習はどうなる?
産前産後休業は、産前が本人の請求で出産予定日の6週間前から、産後が原則8週間です。この間、実習は一時中断の扱いになり、会社は機構に「技能実習実施困難時届出書」を出します。名前は重いのですが、妊娠による中断でも使う届出です。
休業に入る時点で再開の時期が見えているなら、この届出と一緒に実習計画の変更認定を申請できます。同じ会社で再開するなら変更認定、会社が変わるなら新規の認定です。中断している間に在留期間が切れる場合は、地方入管で在留期間の更新を申請します。母子手帳の写しなど出産予定日が分かる資料と、復職の見込みが分かる資料を添えます。
お金の面では、健康保険に入っていれば出産育児一時金と出産手当金が出ます。国籍や出産する場所は関係ありません。休業中の健康保険と厚生年金の保険料は、手続きをすれば免除されます。育児休業は、雇用期間が1年以上で、子が1歳6か月になるまでに契約が終わることが明らかでない人が対象です。契約がいつ終わるかは在留期限ではなく、残りの実習期間や2号・3号に進む予定で判断します。

一時帰国して産む場合
母国で産みたいという人もいます。この場合も困難時届出書を出して実習を中断します。帰国が1年未満なら「みなし再入国許可」で出国でき、再入国許可の申請は要りません。1年を超えるなら、在留期間の範囲内で再入国許可を取ります。
注意するのは在留期間です。帰国中に在留期間が過ぎると、変更認定を受けたうえで在留資格認定証明書の交付申請からやり直しになります。最初の入国のときと同じ手間がかかるので、帰国前に在留期限と再開予定日を並べて確認しておきます。
言い出せない人がいる、という前提で
入管庁が2022年12月23日に公表した実態調査では、「妊娠したら仕事を辞めてもらう」といった発言を受けたことがある実習生が26.5%いました。言ったのは送出機関が73.8%、監理団体が14.9%、実習実施者が11.3%です。妊娠を理由とした不利益な扱いが禁止されていることを説明されて知っていた人は約60%にとどまりました。
つまり、会社が何も言っていなくても、本人が「妊娠したら帰される」と思い込んで来日していることがあります。そう思っている人は相談しません。相談が遅れると、健診を受けないまま重い作業や夜勤を続けることになります。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、配属後に送り出し機関の先生も交えてオンライン面談をすることがあります。「日本に慣れた」「日本人ともうまくいっている」と話す人がいる一方で、反応の薄い人もいます。困っていることがあっても、聞かれるまで言わない人は確かにいます。だから、妊娠しても実習はやめなくてよいこと、機構に母国語で相談できる窓口があることは、何も起きていないうちに伝えておくものだと考えています。入管庁のページにはミャンマー語を含む各国語の本人向けリーフレットがあります。
送出機関が実習生との間で、妊娠したら帰国すると約束させることも許されていません。監理団体を選ぶときは、送出機関との契約にそうした条項がないかを聞いてみてください。答えに詰まるようなら、確認していないということです。
育成就労ではどうなるか
2027年4月施行予定の育成就労でも、労働基準法や男女雇用機会均等法が適用される点は同じです。妊娠を理由にした解雇ができないことは変わりません。ただし、中断と再開の届出や様式がどうなるかは、現時点の情報では技能実習と同じ形で確認できていません。育成就労での受け入れを予定している会社は、入管庁の最新情報をご確認ください。
受け入れ前に決めておくこと
女性を複数名受け入れる会社が先に決めておくことは3つです。1つ目は、妊娠の報告を誰が受けるか。現場のリーダーではなく、制度を説明できる人にします。2つ目は、夜勤や重量物の工程から1人抜けたときにシフトをどう回すか。産前6週と産後8週だけでも14週は不在になります。3つ目は、本人向けリーフレットを母国語で渡す時期です。当組合は入国後の講習か配属時をおすすめしています。
三重県・東海地方で、女性の実習生をこれから受け入れる会社、すでに受け入れていて対応に迷っている会社は、MOOZ事業協同組合にご相談ください。受け入れ人数と工程、夜勤の有無が分かれば、届出の流れとシフトの考え方を具体的にご案内します。連絡先は MOOZ公式サイト にあります。