在留手数料の値上げが介護施設に重いのは、価格に乗せられないから
同じ値上げなのに、なぜ介護施設だけ重く感じるのか
在留手数料の値上げが介護施設に重いのは、金額が介護だけ高いからではありません。増えた費用を料金に乗せる手段がないからです。出入国在留管理庁(入管庁)のリーフレット(2026年9月発行)によると、2026年10月1日以降に受け付けられた申請から、在留期間の更新は「1年」の許可で窓口33,000円、オンライン27,000円になりました。改定前は期間にかかわらず窓口6,000円、オンライン5,500円でした。この金額は、食品工場でもホテルでも介護施設でも同じです。
違うのは、その先です。工場は取引先と単価の交渉ができます。ホテルは宿泊料金を見直せます。介護施設の収入は、大部分が介護報酬です。
介護報酬とは、介護サービスの対価として事業者が受け取る金額を、国がサービスの種類ごとに定めた公定価格です。施設の側で「手数料が上がったので来月から料金を上げます」とはできません。
念のために書いておくと、手数料の改定は入管庁の制度として決まったもので、介護報酬とは別の話です。介護報酬が理由で手数料が上がったわけではありません。二つが重なって見えるのは、費用が増える側と収入が決まる側が、どちらも施設の手の届かないところにあるからです。

1人あたり5年でいくらになるか
特定技能1号は、入管庁の案内によると通算の在留期間が原則5年以内です。5年働いてもらう間に、在留期間の更新が何度か必要になります。
仮に、毎回「1年」の許可を受ける方で考えます。最初の1年のあと、更新は4回です。窓口で申請すると33,000円が4回で132,000円。改定前の金額なら6,000円が4回で24,000円でした。1人あたりの差は108,000円です。
オンラインで申請すると27,000円が4回で108,000円になります。窓口より24,000円低くなりますが、入管庁のリーフレットには、オンラインの場合は別に決済手数料がかかると書かれています。
技能実習から特定技能へ切り替える方は、切り替えのときに在留資格の変更許可が必要で、ここでも同じ表の手数料がかかります。技能実習の期間中も、1号から2号へ移るときの変更許可や、その後の更新で手数料が発生します。
一つ注意があります。手数料は「許可された在留期間」で決まります。1年を超え3年未満の許可なら、窓口48,000円、オンライン42,000円です。何年の許可になるかは入管が審査で決めるもので、会社が選べるものではありません。予算を組むときは、1年の許可が続く前提で見ておくほうが安全です。許可される期間の扱いは、入管庁の最新情報で確認してください。
10人いる施設では、年33万円の年が来る
多人数を受け入れている施設ほど、この数字は効いてきます。
特定技能1号の職員が10人いて、全員が1年の許可を窓口で更新する年は、手数料だけで33万円です。改定前は6万円でした。5年間の合計では132万円で、改定前の24万円から108万円増えます。
入国の時期がそろっている施設では、更新も同じ月に集まります。同じ時期に来た10人なら、ある月に33万円がまとまって出ていきます。入管庁の手続き案内では、在留期間が6か月以上ある方の更新は、満了日の3か月前から申請できます。満了日が近い人が何人いるかを、月ごとに並べておかないと、資金の準備が間に合いません。

処遇改善加算は、手数料には使えません
「2026年に介護報酬が上がったはずでは」と思われた方もいるはずです。
厚生労働省老健局長の通知(2026年3月13日付)によると、令和8年度の介護報酬改定は、令和9年度の定期の改定を待たずに行われた期中改定です。中身は介護職員等処遇改善加算の拡充で、2026年6月から、介護従事者に月1.0万円(3.3%)の賃上げを実現する措置などが始まりました。
同じ日に出された厚生労働省のQ&Aには、介護職種の技能実習生と、介護分野の1号特定技能外国人も、この加算の対象になると書かれています。外国人職員も、日本人職員と同じ仕組みで賃金が改善されます。
ただし、この加算は使い道が決まっています。通知では、加算の算定額に相当する額を、職員の賃金の改善に充てなければならないとされています。在留手数料は賃金ではありません。加算が増えても、手数料に回せるお金が増えるわけではないのです。
つまり、2026年の改定で増えた収入は職員の給与に行き、10月に増えた手数料は、それとは別の財布から出すことになります。次の定期の改定は令和9年度ですが、手数料の増加分がそこでどう扱われるかは、現時点で公表されていません。
施設が先に決めておく3つのこと
費用のご相談では、「内訳を実額で知りたい」という声がいちばん多く届きます。手数料も同じで、「重い」という感覚のままにせず、年度ごとの金額にしてしまうのが出発点です。
1つ目は、満了日の一覧です。外国人職員全員の在留期間の満了日を、在留カードで確認して月順に並べます。年度ごとに「何人×いくら」が出れば、予算に入れられます。
2つ目は、申請方法です。1年の許可なら、オンラインは窓口より1回6,000円低く、10人で6万円の差になります。別にかかる決済手数料と、オンライン申請を利用できる方の範囲は、入管庁の「在留申請オンラインシステム」のページに載っています。
3つ目は、誰が負担するかです。手数料は、許可を受ける外国人本人の手続きにかかるものです。会社が出すのか、本人が出すのか、一部を補助するのか。決めないまま更新の月を迎えると、33,000円を前にして本人も施設も困ります。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、負担の決め方そのものより、「更新の月が来る前に決めて、書面にして、本人に分かる言葉で伝えてあること」を先に確認するよう案内しています。会社が負担する場合は、何回目の更新まで、退職した場合はどうするかまで決めておくと、後で揉めません。
相談の前に手元に用意するもの
用意していただきたいのは、外国人職員ごとの在留資格と満了日の一覧、それに現在の手数料の負担の取り決めです。この2つがあれば、向こう5年の手数料の見込みは、その場で一緒に出せます。
MOOZ事業協同組合は、三重県津市の監理団体で、ミャンマー人材の受け入れを専門にしています。介護の技能実習は当組合が、特定技能の支援はグループ企業の株式会社NADy(登録支援機関)が担当し、在留手続きのスケジュール確認や必要書類のご案内をしています。受け入れは2名から、三重県・東海地方を中心にご相談を受けています。これから介護で外国人材を受け入れる施設も、すでに他の団体で受け入れていて費用の見通しを立て直したい施設も、こちらからご連絡ください。
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