育成就労の日本語の条件―入国前のA1から、2年目以降の試験まで―

育成就労の日本語の条件―入国前のA1から、2年目以降の試験まで―

はじめに ~日本語は「入国前に1回」では終わらない~

「入国前にA1を取れば、日本語の条件はおしまい」。育成就労の相談で、ときどきこう受け取られています。

実際は違います。現時点の情報では、日本語の条件は入国前・本人の希望で転籍するとき・特定技能1号へ移るときの3か所に置かれています。いちばん高いのは最後のA2相当(日本語能力試験N4など)です。

つまり、受け入れ企業が見ておくべきなのは入国前より3年目です。

この回では、入国前から3年目までの日本語の条件を時期の順にたどります。育成就労は2027年4月施行予定の新しい制度で、細かい点は政省令や運用要領で変わることがあります。

この記事のポイント

1. A1・A2とは何か ~会話の深さを6段階で表した物差し~

A1・A2とは、ヨーロッパの言語の物差し(CEFR)をもとにした、日本語の力の段階です。

A1は、自己紹介や決まった言い回しで、ゆっくり話してもらえれば簡単なやり取りができる段階。A2は、買い物や仕事の身近な話題なら、短い会話がこなせる段階です。

日本語能力試験(JLPT)に当てはめると、政府の資料ではA1はN5、A2はN4が例として挙げられています。

2. 入国前 ~A1の試験に合格するか、100時間の講習を受ける~

働き始める前の条件は、2つのどちらかです。

ひとつは、A1相当の日本語の試験に合格すること。もうひとつは、A1相当の講習を受けることです。

厚生労働省が公表した資料(2026年8月31日の概要資料)では、A1相当の講習は100時間のモデルが示されています。有識者の検討の段階でも、日本語教育機関の認定制度で初心者向けの最低時間が100時間であることを根拠に、「最低100時間以上」という案が出ていました。

講習を誰が行えば数えられるのか、講習時間は労働時間にあたるのか、は別の回で書きました。ここでは「試験か講習か」の2本道があることだけ押さえてください。

3. JFT-Basicの点数 ~145点でA1、200点でA2~

入国前の試験として使われるのが、国際交流基金のJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)です。

国際交流基金は2026年8月3日、判定の変更を発表しました。それまではA2に届いたかどうかだけを示していましたが、2026年8月以降の試験から、次の3段階で判定されます。

  • 145〜174点:A1
  • 175〜199点:A2.1(A1に届き、A2に向けて進んでいる段階)
  • 200〜250点:A2.2(7月までの「A2」と同じ)

145点に届かない場合は、判定欄が「*」になります。試験の形式や問題の難しさは変わらない、と同基金は説明しています。

使い道も示されています。A1は育成就労の申請、A2.1は主に本人の希望による転籍の手続き、A2.2は特定技能1号の申請に使えます。

ひとつ注意があります。育成就労の申請にA1の判定を使うなら、2026年8月以降に受けた試験の結果通知が必要です。それより前の通知には、A1やA2.1の判定が書かれていません。

MOOZ事業協同組合

4. 1年目と転籍のとき ~途中にも確かめる場面がある~

働き始めてからも、日本語は途中で確かめられます。

政府の資料では、就労開始からおおむね1年のあいだに、A1相当の日本語の試験を受けることが中間の目安として置かれています。この時点で合格まで求めるのかどうかは、資料や解説によって書き方が分かれています。運用要領の最終版で確かめてください。

もうひとつが、本人の希望で別の会社へ移る(転籍する)ときです。転籍には、同じ会社で一定の期間働いたことに加えて、技能と日本語の水準を示すことが条件になる見込みです。

国際交流基金がA2.1という段階を新しく作ったのは、この転籍のときの証明に合わせるためだと説明しています。分野ごとにどの水準が求められるかは、分野別の運用方針で決まります。

5. 特定技能1号へ移るとき ~A2相当の試験合格が条件~

3年の育成就労を終えて特定技能1号へ移るには、技能の試験に加えて、A2相当以上の日本語の試験(N4など)に合格していることが条件です。

技能のほうは、技能検定3級など、または特定技能1号評価試験の合格です。

政府の資料では、移るときの試験に合格できなかった場合、再受験のために最長1年、在留を続けられる扱いが示されています。ただ、これは救済の道です。予定どおり3年目に移れるよう、2年目のうちに合格しておく計画を立てる会社が多くなると見ています。

介護など、分野によっては日本語の条件が上乗せされます。自社の分野の運用方針も合わせて確認が要ります。

時期の順に並べると、次のようになります。

入国前      A1相当(試験合格 または 100時間の講習)
1年目       A1相当の試験を受ける(中間の目安)
転籍のとき  一定の日本語の証明(JFT-BasicではA2.1が主な対応)
3年目       A2相当(N4など)の試験合格 → 特定技能1号へ
            不合格なら再受験のため最長1年の在留継続

6. 2年たつと差がつく ~3年目に慌てないために~

制度の条件より、現場でよく見るのは「同じ時期に来た人のあいだの差」です。

兵庫県の食品工場(そう菜加工・女性5名)の監査で。全員が2024年8月に入国した人たちでしたが、2年たつと日本語の伸び方にははっきり差がついていました。

入国前の成績がそろっていても、配属後に誰と話すか、仕事のあとに勉強の時間があるかで伸び方は変わります。

育成就労では、この差がそのまま「3年目に特定技能1号へ移れるかどうか」に表れます。だから、A2の試験は3年目に初めて考えるものではありません。2年目の終わりまでに一度受けてみるくらいの日程で見ておくと、落ちたときにも次の試験の回に間に合います。

MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、入国前の日本語をA1の最低線に合わせないよう、送り出し側と一緒に準備しています。当組合で入国するミャンマーの女性は、多くがN3・N2を取得しています。N3・N2はN4より上の級です。

ただ、入国時の級が高くても、配属後に日本語を使う場面が少なければ伸び悩みます。当組合では、巡回で見た様子をミャンマーの日本語学校に返し、教え方にも反映してもらっています。

おわりに ~受け入れ企業がすること~

日本語の条件を受け入れ企業の仕事に直すと、次の3つです。

  • 採用面接の前に、候補者のJFT-Basicの結果通知が2026年8月以降の試験のものかを確かめる
  • 1年目の終わりと2年目の終わりに、日本語の試験を受ける日を年間の予定に入れておく
  • 多人数を受け入れる工場・宿泊・介護では、シフトの中に勉強の時間を取れるか、寮で日本語を使う機会があるかを先に決めておく

5名、10名とまとめて受け入れると、日本語の伸び方の差も人数分出てきます。1年目のうちに一人ずつの進み方を見ておくと、3年目の移行の計画が立てやすくなります。

次回は、本人の希望による転籍を取り上げます。何年働けば移れるのか、受け入れ企業は何を準備しておくのか、を書きます。

自社の受け入れ時期に当てはめて、いつ・どの試験を受けさせればよいかを知りたい場合は、30分の無料オンライン相談をお使いください。

相談のときは、業種・受け入れたい人数・入国させたい時期を教えてください。こちらからは、入国から特定技能1号への移行までの日程の目安と、費用の内訳をお返しします。

30分無料オンライン相談:MOOZ公式サイト

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