日本語講習の100時間は労働時間か、育成就労Q&Aの答え
育成就労の日本語講習は、受講時間を労働時間として扱う義務はありません。出入国在留管理庁(入管庁)の「育成就労制度Q&A」が、そう答えています。
ただし、会社が出席を命じれば、労働基準法の考え方では労働時間に当たりえます。多人数を受け入れる工場・旅館・介護施設は、講習を勤務の中に入れるか外に置くかを、受け入れを決める前に決めておく必要があります。
入管庁の育成就労のページによると、Q&Aは2026年10月15日に更新されました。どの問が変わったかの一覧は付いていません。この記事は、10月18日時点で掲載されている版をもとにしています。育成就労は2027年4月1日施行予定の制度で、現時点の情報では、という前提で読んでください。
会社に課されるのは「受講の機会」を用意すること
入管庁のQ&A(問63)によると、育成就労を行う会社は、3年のあいだにA2相当の「就労」課程の講習を100時間以上受けられる機会を本人に用意しなければなりません。
A2とは、文部科学省の「日本語教育参照枠」で、日常の身近な話題についてやりとりができる段階です。育成就労の目標は、3年を通じてA2.2相当の試験に合格することとされています(問62)。
講習の費用は、会社か監理支援機関(今の監理団体にあたる機関)が負担を含めて手当てする、とされています(問65)。本人に払わせる前提で計画は組めません。
なお、A2.2相当の試験にすでに合格していれば、この講習は原則いらないとされています。どの試験が認められるかは分野ごとの運用方針で決まるので、分野ごとに確かめてください。

Q&Aの答えは「労働時間にする義務はない」
問68は、まさにこの点を聞いています。答えは「当該講習を受講している時間を労働時間として扱うことを義務付けるものではありません」です。
会社の義務は、講習を受けられるよう必要な措置をとること。受講時間に給料を払うことまでは、育成就労のルールでは求めていません。
これを読んで「では終業後や休日に受けてもらえばいい」と考える会社は多いと思います。ここで止まると危うくなります。
会社が出席を命じれば、労働時間に当たりうる
育成就労のルールと、労働時間のルールは別物です。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月策定)は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」としています。そのうえで、業務上参加が義務づけられている研修・教育訓練の受講を、労働時間として扱う時間の一つに挙げています。
つまりQ&Aは「育成就労として、労働時間にしなさいとは決めていない」と言っているだけです。会社が「この日のこの時間に出なさい」と命じた講習は、労働基準法の考え方で労働時間かどうかが判断されます。
出欠を評価に結びつける、欠席すると注意する、といった運用も、実質的には義務づけに近くなります。迷う場合は、労働基準監督署か社会保険労務士に、具体的な運用を示して確かめてください。

10人受け入れる工場なら、延べ1,000時間をどこに置くか
人数が増えると、この話はシフトと費用の問題になります。
10人なら、講習は3年で延べ1,000時間以上です。仮に時給1,200円の人が全員、勤務として受けると、講習の時間だけで約120万円の人件費になります(講習そのものの費用は別。数字は説明のための試算です)。
逆に、すべて終業後・休日にして「任意」とすると、今度は受講が進みません。A2.2相当の試験に届かなければ、特定技能1号へ移るときに困るのは本人と会社の両方です。
もう一つ、現場の事情があります。
日本語の進み方は一人ずつまったく違う。同じ時期に入った人でも、会話は第1課でも文法は第9課まで進む人がいる。
これは当組合の巡回報告と、ミャンマーの提携日本語学校とのやり取りで毎回出てくる話です。10人を同じ教室・同じ時間割に入れても、同じ速さでは進みません。講習の時間を一律に決めるより、誰が、いつまでに、どこまでを一人ずつ見て組むほうが現実的です。
当組合が、受け入れ前に決めておくよう勧めていること
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、育成就労を検討している会社に、講習の扱いを雇用条件の説明より前に決めておくことを勧めています。決めるのは次の3点です。
- 勤務として受けてもらうのか、任意参加にするのか
- 勤務として受ける場合、どのシフトのどの時間に入れるのか(ライン・夜勤・繁忙期との兼ね合い)
- 講習の費用を会社と監理支援機関のどちらが、どこまで負担するのか
多人数の工場では、全員を一度に抜くとラインが止まります。2〜3人ずつの組に分けて時期をずらす、オンラインの講習(双方向で同時にやりとりできることなどの要件あり。問64)を組み合わせる、といった組み方になります。
なお、当組合で入国する女性の技能実習生・育成就労の人は、基本的にN3以上を持って来ています。それでも、講習の義務がなくなるかどうかは、先に書いたとおり分野ごとに認められる試験しだいです。N3があるから大丈夫、とは言い切れません。
次に確かめる1点
まず、自社の分野で、A2.2相当として認められる試験は何かを確かめてください。これで、講習を全員に組む必要があるのか、一部で済むのかが変わります。分野別の運用要領は、入管庁と外国人育成就労機構のページに順次載っています(飲食料品製造業は10月9日、宿泊は10月16日に公表)。
ご相談のときは、業種・受け入れたい人数・受け入れたい時期を教えてください。こちらからは、その条件での講習の組み方の案と、受け入れまでの日程をお返しします。
30分の無料オンライン相談は、こちらから申し込めます。
MOOZ公式サイト
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