育成就労を受け入れられない会社―非自発的離職と人数枠―
はじめに ~「待てば誰でも使える」わけではない~
「技能実習で今入れるか、2027年4月の育成就労を待つか」。当組合に寄せられる相談で、いま一番多いのがこの質問です。
ただ、待つかどうかを決める前に確かめておくことがあります。育成就労は、会社の側に受け入れられない条件がある制度です。
入管庁の「育成就労制度Q&A」(Q39)では、受け入れ企業の条件として次の2つが示されています。
- 過去1年以内に、育成就労外国人に任せる仕事と同じ仕事をしていた労働者を、会社都合で辞めさせていないこと(自発的に辞めた人などは除く)
- 過去1年以内に、受け入れ企業や監理支援機関の責任で、育成就労外国人を行方不明にさせていないこと
もう1つの壁が人数枠です。常勤職員の数で、受け入れられる上限が決まります。
この回は、この2つを扱います。いずれも、現時点の情報(2026年10月時点の入管庁Q&Aと、2026年8月版の育成就労制度運用要領)にもとづく内容です。政省令や運用は変わりうるため、申請の前には入管庁の最新情報もあわせてご確認ください。

1. 非自発的離職とは何か ~会社都合で辞めてもらうこと~
非自発的離職とは、本人が望んだのではなく、会社の都合で職を離れることです。 解雇や、人員整理のための退職の勧め(退職勧奨)が典型です。
どんな辞め方がここに当たるかの細かい線引きは、Q&Aには書かれていません。運用要領で確かめる部分です。
この条件の趣旨ははっきりしています。今いる働き手を辞めさせ、その穴を育成就労の人で埋めることを防ぐためです。
育成就労は、人手が足りない仕事で外国人を育てる制度です。人を減らした直後の会社が同じ仕事で外国人を入れると、人手不足ではなく置き換えに見えます。だから、育成就労の計画を認める段階で確かめられます。
なお、特定技能にもよく似た条件があります。特定技能で受け入れている会社には、なじみのある考え方です。
2. 「同じ仕事」と「1年」で当てはめる ~まず業務と日付を見る~
大事なのは「会社全体で誰かを辞めさせたか」ではなく、「育成就労の人に任せる仕事と同じ仕事の人を辞めさせたか」です。
たとえば食品工場が、盛り付けラインに育成就労の人を入れたいとします。
この会社が、半年前に事務部門で人員整理をしていたとします。この場合は仕事が違うので、まず確かめるのは盛り付けラインの側です。
逆に、同じラインのパートさんに会社の都合で辞めてもらっていた場合は、条件に引っかかる可能性があります。
期間は過去1年以内です。日付で考えると分かりやすくなります。
育成就労の施行は2027年4月1日です。2026年秋に、受け入れたい仕事と同じ仕事で人員整理をした会社が、2027年の初めに計画の認定を申請するとします。その場合、申請はその整理から1年以内になります。
当組合では、育成就労を検討している会社に、受け入れを予定している仕事について、過去1年に辞めた人を一覧にしておくことをおすすめしています。
辞めた理由が本人の希望か、会社の都合か。そこが分かれば、相談の段階で計画を立て直せます。

3. 行方不明者を出した会社 ~会社の責任かどうかで分かれる~
2つ目の条件は、過去1年以内に、会社や監理支援機関の責任で育成就労外国人を行方不明にさせていないことです。
Q&Aでは「責めに帰すべき事由により」とあります。行方不明者が出たら即座にだめ、という書き方ではありません。
ただ、会社の責任があったかどうかは、あとから記録で判断されます。賃金の支払い、労働時間、寮の様子、相談への対応。記録が残っていない会社ほど、説明に困ります。
今、技能実習生を受け入れている会社は、育成就労に移ったあとも同じ目で見られます。今の受け入れの記録が、そのまま次の制度での材料になります。
4. 人数枠は法人全体の常勤職員で決まる ~事業所ごとではない~
受け入れられる人数の上限は、事業所ごとではなく、法人全体の常勤職員の数で決まります。
入管庁・厚労省の関係省令の資料(令和7年9月30日公布の省令に関するもの)では、たとえば次のように示されています。
常勤職員が201〜300人の会社は、基本の枠が45人です。優良な受け入れ企業と認められると90人になります。
さらに、指定区域にある優良な会社が、優良な監理支援機関の支援を受けると135人まで広がります。Q&A(Q36)では、これを「基本人数枠の3倍」と説明しています。
常勤職員が301人以上の会社は、常勤職員総数の20分の3(15%)が基本の枠です。優良なら10分の3、指定区域の特例に当たれば20分の9です。
指定区域とは、Q&A(Q41)によると、東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫の8都府県を除いた道県と、この8都府県の一部の地域です。三重県は指定区域に入ります。
ホテルや介護の法人で、複数の施設を持っている会社は、施設ごとではなく法人の常勤職員を合計して数えます。施設が多い会社ほど、枠には余裕が出ます。
5. 枠を広げるのは会社だけの話ではない ~監理支援機関も優良であること~
3倍の枠を使うには、受け入れ企業だけでなく、監理支援機関も優良と認められている必要があります。
ここは、工場・宿泊・介護で、毎年まとまった人数を入れたい会社ほど効いてきます。
自社が優良になっても、支援を頼む監理支援機関が優良でなければ、地方の3倍の枠は使えません。監理支援機関を選ぶときに、「その団体は優良として許可を受ける予定か」を聞いておく理由はここにあります。
MOOZ事業協同組合(三重県津市)では、多人数の受け入れを考えている会社には、人数枠から逆算して計画を立てることをおすすめしています。寮の部屋数とシフトの組み方も、何人まで入れられるかが決まってからでないと決まらないからです。
当組合は2名からの受け入れに対応しています。そう伝えると驚かれることが多いのですが、人数の上限は組合が決めるのではなく、常勤職員の数で決まります。
おわりに ~受け入れる前に会社がすること~
育成就労を待つかどうかを決める前に、次の3つを手元にそろえておくと話が早く進みます。
- 法人全体の常勤職員の数(パート・アルバイトのうち常勤に当たる人の扱いも含めて)
- 受け入れたい仕事で、過去1年に辞めた人と、その理由
- 受け入れたい人数と、その人数が住める寮の部屋数
まず確かめてほしいのは、2つ目の「過去1年に辞めた人」です。 人数枠は数えれば分かりますが、こちらは理由を一人ずつ見ないと分かりません。
次回は、育成就労の日本語の要件を扱います。入国前と入国後で、誰が何を教えるのかを整理します。
相談のときは、業種、常勤職員のおおよその数、受け入れたい人数と時期を教えてください。当組合からは、技能実習で今受け入れる場合と、育成就労を待つ場合の、それぞれの受け入れの日程の目安をお返しします。
30分の無料オンライン相談は、こちらからお申し込みいただけます。
MOOZ公式サイト
参考:出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」 🔗 出入国在留管理庁のページ / 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度 運用要領」(令和8年8月) 📄 出入国在留管理庁の資料(PDF)